連載セミナー対してプラスマイナスの影響を及ぼすのか、ということについて調べました。すると、8因子のどれを重視するかは個人次第だと言いつつも、会社側のマネジメントでは8因子の多くに効く取り組みがあることがわかりました。メンバーに対して、「社会・地域の一員として活躍できる」という施策を行っている会社では、メンバーの8つの因子は全て高い傾向にあります。「個の尊重」という施策も、「多忙感」以外の7因子に対してプラスに効きます。とくに「個の尊重」は「社会・地域の一員として活躍できる」よりも効果的に作用します。「社会・地域の一員として活動できる」については、皆さん、公務員が行っている仕事は本当にそういうものでしょう。皆さんがしている仕事そのものが、生き生き働くことができ、それを実感しやすい、恵まれた仕事であるということを、まずお伝えできます。その前提に立って、より良いマネジメントを目指してさらに何ができるか、というと、「個の尊重」です。個人を尊重することで、メンバーの「活力実感」やどを高めることができます。「個の尊重」では、生き生き働くための十人十色の源泉を、そうした本人の思いを、上司がちゃんと引き出してあげる、もしくは尊重してあげるということが大切です。メンバー一人一人にとって望ましい状態を、組織とWin-Winになるように形にするのが「i-deals」です。個人を尊重し、その人が受け入れられている、と実感できるようにするのが「心理的安全性」です。まさにこうした個人の尊重こそが、職員の「生き生き働ける」を高めていくために一番有効なのです。ここまで、「心理的安全性」を高めましょう、それを促進する一つの方法が「1on1」と言われるものです。「1on1コミュニケーション」や「1on1マネジメント」など、いろいろな言い方があり、コロナ禍でテレワークが拡大したこともあり、多くの職場で導入されるようになりました。「1on1」を通じて上司と部下の関係性が良くなり、部下のモチベーションが上がり、職場の雰囲気も良くなり、さらには上司のモチベーションも上がったりすることがわかっています。ですから、部下の気持ちを掴みたいのであれば、「1on1」をうまく使っていただきたいと思います。「1on1」は本来、部下に寄り添い、伴走するための施策なので、知識やスキルをもたずに行うと、逆効果になることがあります。例えば、「1on1」の場で、部下を詰めてダメ出しを続けたり、「上司の言うことに何も言わずに従え」としか言えなかったりすると、当然、部下はその上司と話したいと思わなくなりますし、場合によっては会社に対する満足度が下がることさえあります。「1on1」の目的は、部下を追い込んで目先の業務効率を高めることではないので、その位置づけについては注意が必要です。また、部下に答えを教えてあげすぎるのもダメです。部下から「何々で困っています」と言われると、上司側は全て経験したことがあり、対処法も分かっているので、「これだよ」と教えたくなるかもしれません。しかし、部下本人が主体的に動けるように、本人が自分の気付きの中で次のステップが踏めるようにしていくことが大事なので、単純な指導の場にならないように注意が必要です。一般的に、「1on1」は頻度が高いほど、部下のモチベーションは高くなり、職場のコミュニケーションはスムーズになります。上司として「1on1」を行うのがちょっと不安だなという方は、ぜひ外部の研修に参加してみたり、書籍で勉強したりするといいと思います。職場で「1on1」や「i-deals」を進めるときに、もう一つご注意いただきたいのが、「無意識のバイアス」と言われているものです。会社で労働条件や働き方について要望したときに「叶えてもらえたかどうか」を、性別で集計したところ、希望が叶う割合は全般的に女性の方が高いことがわかりました。これについては、いろいろな解釈ができます。例えば、現状、女性の方が責任の小さい仕事に就いている人が多いので、何かを相談された時に調整余地が大き「職務満足」「有意味感」「居場所感」「持ち味発揮」な「i-deals」を実現しましょう、と申し上げてきました。 68 ファイナンス 2025 Feb.7.「無意識のバイアス」に注意6.「1on1コミュニケーション」の可能性
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