連載セミナー 令和6年度上級管理セミナー(78%)は、「雇用の安定性」「働く仲間の関係性」を重視しています。このように、キャリア自律の意識にはかなり個人差があります。管理職として部下をマネジメントするときには、本人が何に意義を感じ、何があったら嬉しいと思うか、ということを丁寧に見ていくことが大切です。さらにリクルートワークス研究所は、「生き生き働けるというのは、どういう要素が揃う時なのか」を専門家に尋ね、個人に調査して分析するプロジェクトも行っています。生き生き働けるための条件は、専門家の知見によれば、例えば「ワーク・エンゲージメント」です。日本はこれが低いとギャラップ社の調査報告で指摘され、新聞等でもたびたび取り上げられています。他には、先ほど言った「心理的安全性」や、最近よく話題になるところでは、健康や幸福を包括する「ウェルビーイング」などが挙げられています。次に、1,600人の個人にアンケートを実施して、「あなたが生き生きと働けるというのはどういう状況ですか」「あなたが生き生き働けないというのはどういう状況ですか」ということをコメントしてもらったところ、専門家のインタビューの中では出てこなかったけれども、個人の語りには出てくる表現がいくつか見つかりました。例えば、「自分の意思決定で進められることが大事」という人もいれば、「自由にできることが大事」という人もいます。「計画通りに仕事が進むことが大事」な人もいれば、「仕事をやり遂げられたことが大事」な人もいる。「無理なく働くことが大事」な人もいれば、「忙しく働いていることが大事」な人もいる。いろいろなタイプの個人がいました。そこでさらに1万人に調査を行って、「生き生き働くということは、どういう因子で構成されているのか」について、因子分析を使ってまとめました。すると、8つの因子が、生き生き働くことを決定する、ということが分かりました。1番目は「活力実感」、2番目は「強みの認知」、3番目は「職務満足」、4番目は「有意味感」、5番目が「オーナーシップ」、6番目が「居場所感」、7番目が「持ち味発揮」、8番目が「多忙感」です。これは、8因子全部が高いことが望ましい、とか、全部を高くする必要がある、ということを言っているのではなくて、例えば、皆さんの中でも、「有意味感」と「活力実感」と「多忙感」が大事だという人もいれば、「居場所感」と「持ち味発揮」が大事だという人もいる。どの因子が大事か、というのは個人差があるので、メンバーの人がどの因子を重視しているのかを意識しながら見るというのが大事、もしくはそういうのを引き出すのが大事だというフレームワークです。もう一つお伝えしたいのは、あるメンバーは、今の仕事だったら、8つの因子のうち、1番、2番、3番、4番を望んで、いずれも満たすことができる。でも人事異動で次にやってもらう仕事の時は、明らかに、2番と4番を満たすことができないということが、どうしても組織の事情で発生することがあります。管理職の力量が問われるのはまさにその場面で、本人が望まない仕事に就く時に、どれだけ「有意味感」や「持ち味発揮」ということを伝えられるか、というのがとても重要です。「今回のこの経験は、あなたにとってこういう意味があるから、この経験の中で、どういう能力を発揮して、こういう経験を積んでほしい。それがあなたの中長期的なキャリアパスの中でこういう意味があるのだ。」ということをきっちり説明できるかどうかは、本人の受け止めとその後の頑張りに直結します。特に本人にとって不本意な仕事に異動させる場面では、上司や人事がきちんと配慮をして、そうした声がけをすることがとても重要です。続いて、会社側がどんなマネジメントを行うと、「生き生き働く」を構成する8因子が高くなるのかを分析しました。具体的には、会社側が「個の尊重」「勤務日を選ぶ」「労働勤務時間を選ぶ」「働く場所を選ぶ」「予期せぬ異動」「社会・地域の一員として活動できる」、といったマネジメントをすると、8つの因子にファイナンス 2025 Feb. 675.人材マネジメントへの影響2.生き生き働くとは?:専門家の知見から3.生き生き働くとは?:個人の語り4.「生き生き働く」を構成する8つの要素
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