連載セミナーAUKUSAUKUS Pillar 2を通じて日本や韓国が協力の枠組みAUKUS(Australia-UK-US)には、日本は入っていないのですが、イギリスがこれに入ってくれたことで、イギリスのアジアに対するコミットメントがさらに制度化された面があり、反射的利益を得ています。に入っていく可能性は残されているかなということです。豪・米・英の三国関係に日韓が協力するのはとても意味あることだと思います。オーストラリアが本当に原子力潜水艦を持つようになるのかは、多くの専門家が疑問に思っているところですが、そうなってくれれば、インド太平洋全体の西側の防衛力アップに寄与することは間違いないと思います。ただし、時間がかかりそうな話ではあります。韓国の場合、北朝鮮がどうしても第1の懸念です。北朝鮮はウクライナにおける戦争にロシア側でコミットしていますし、核兵器も相変わらず増やし続けていて、最近は外交的にも非常に韓国に対してアグレッシブになっています。韓国側が心配になるのはごもっともという感じです。「朝鮮半島も大事だけれども、台湾も大事だよ。」ということを、日本は韓国と一生懸命対話していく必要があります。アジア版NATOや地位協定の議論があるなかで、日本も核共有をやると言い出したら当然、韓国は「真っ先にやります。」と言うと思います。それを現実的に考えた時に、それこそミサイルが10分、15分で飛んでくる場所にどういうものを配備しておくのがリアリスティックなのかを考えないといけないと思います。1950年の朝鮮半島を思い起こしていただいても、あっという間に釜山近くまで北の軍隊が降りてきているわけですから、相当大きな動きがあるかもしれない。その前提の上で、抑止というものをどうやって効かしていくか、かつ今回は相手が核兵器を持っている状況ですので、かなり難しい。アメリカがどうなるかという不確かさがあるのに加えて、やはり韓国も相当揺れるし、ここで日本まで揺れると、収拾がつかなくなります。どうやって戦略的安定性を実現していくのかについては、日本は、「ハードウェアをこの地域に今、常に配備しておくことは必ずしも得策ではない、他にもたくさん方法があるはずだ」という立場で韓国をなだめ、三国の中で役割を果たしていくのが良いのではないかと思っております。政策研究大学院大学には海上保安庁のコースがあります。毎年10名程度で、そのうち7、8名がアジア諸国の海上保安庁の学生です。この数年、フィリピンから来る学生の質が飛躍的に向上しており、本気になったな、という感じがしております。今のフィリピンの沿岸警備隊のトップも政策研究大学院大学で博士号を取った人です。今本当に日本を向いてくれているな、という感じがしているので、日本とフィリピンが良い状況にあるうちにしっかり能力を付けていただいて、協力を制度化していく、多少リーダーが変わっても、構造が変わらないような機構を作っておくことが大事だと思います。台湾の東100kmが日本であり、南100kmがフィリピンであるという位置関係です。ここ最近、中国が演習をして広く台湾周辺に展開しております。今のフィリピン政権は少なくとも脅威感を共有していると思いますので、能力構築に日本もしっかり協力しないといけないと思っています。また、米軍が日本で展開しきれない時にフィリピン側に展開することもあると思います。米軍の地上配備ミサイルが日本に入ることは、政治的にはあまり望ましくありません。特に沖縄はセンシティブな地域ですから、それよりは自衛隊が自前で運用する方がいいということは、数年来私が言ってきたことです。今その方向に進んでいることは良いことだと思っています。日本とNATOの協力関係についても、着々と積み重なってきています。EUもNATOもその中心レベルでは、気持ちはしっかりしていて、「日本は一番大事なアジアのパートナーだ」ということで、やってくれています。ところが、各国レベルになると、様々な温度感があって、日本としてはその辺をよく見分けなが3. インド太平洋同盟のネットワーク化(2):4. インド太平洋同盟のネットワーク化(3):日米韓「三国協商」5. インド太平洋同盟のネットワーク化(4):日米比サミット6.日・NATO協力関係の深化 91 ファイナンス 2025 Jan.
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