ファイナンス 2025年1月号 No.710
9/116

ファイナンス 2025 Jan. 4 3つ目は、中長期的に持続可能な経済社会を実現することです。足元の人手不足の大きな要因でもある人口減少は、2030年代に加速することが見込まれており、持続可能な経済・社会のためには、女性活躍を含めた労働参加率の向上に取り組むほか、少子化対策にも取り組むことが必要です。令和5年の1年間における出生数は、約72万7,000人で過去最少、そして合計特殊出生率は1.20で過去最低となりました。少子化は、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えておりますが、いまだ多くの方の「こどもを産み育てたい」という希望の実現には至っていないと認識しております。少子化対策は待ったなしの瀬戸際にあると受け止めており、令和5年末に取りまとめられた「こども未来戦略」に基づき、政府として、少子化対策の強化に取り組むことが重要です。また、令和7年度税制改正においては、子育て世帯等に対する住宅ローン控除等の拡充や生命保険料控除の拡充を実施することとしています。こうした取組により、子育て世代や、若い人たちが将来の展望を拓くことが可能となり、希望と夢をしっかりと持つことができる社会を作っていきたいと考えています。また、我が国の財政状況が極めて厳しい状況にある中、持続可能な経済社会を実現するためには、「経済あっての財政」という考え方の下、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靭な経済・財政を作っていくことが必要となります。こうした中、令和7年度予算については、「経済財政運営と改革の基本方針2024」を踏まえ、日本経済を新たなステージへ移行させることを目指す中で、経済・物価動向等に配慮しながら、中期的な経済財政の枠組みに沿った内容になっていると考えます。具体的には、歳出総額を過去最大となる115.5兆円とする中で、こども・子育て政策や防衛力の強化、GX投資推進やAI・半導体産業の基盤強化といった、財源を確保しつつ複数年度で計画的に取り組む重要政策課題を着実に推進するとともに、予算の適正化や効率化を通じた歳出改革努力をあわせて行うことで、メリハリの効いた予算になったと思っております。税収が過去最高を更新(78.4兆円)したことに加えて、こうした改革努力の結果、令和7年度予算の新規国債発行額は、対前年度比6.8兆円減の28.6兆円と、平成20年度以来、17年ぶりに30兆円を下回る水準となっています。他方、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にあるなど、我が国の財政状況が極めて厳しいことに変わりはありません。政府としては、今後とも、「経済あっての財政」との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。最後に、財政を通じて実施される政策は、国民の皆様からの納税で支えられています。経済社会のグローバル化やデジタル化が進む中、納税者利便の向上や適正・公平な課税・徴収の実現を効率的・効果的に推進していきます。さらに、事業者の業務のデジタル化を促進することにより、税務を起点とした社会全体のDXを推進していきます。以上、今後の経済財政運営等についての抱負とその主な取組について申し述べてまいりました。本年も「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」との財務省の組織理念を胸に、副大臣、政務官、そして総勢7万人からなる財務省職員とともに、全力で職務に励んでまいる所存です。その際、働き方改革を始め、職員が誇りを持って働ける環境作りにも取り組んでまいります。関係する皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。本年が皆様にとって良い一年となりますよう祈念しまして、新年の挨拶とさせていただきます。4 結び3  中長期的に持続可能な経済社会を実現する

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る