ファイナンス 2025年1月号 No.710
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米国フランスイギリスドイツ韓国中国日本0連載経済トレンド消費者センチメント現在の景況感先行きの景況感電気自動車HVその他電気自動車シェア(右軸)HVシェア(右軸)2023年1-9期2024年1-9期伸び率(右軸)自動車ローン金利(5年)自動車ローン延滞率(30日)(※)BEV:バッテリー式電動車、PHEV:プラグインハイブリッド車米国欧州中国EV関連政策〈購入支援〉・米政府による最大7,500ドルの税額控除・州政府による上乗せの税控除〈関税〉・中国製自動車に対する関税(100%)〈購入支援〉・ドイツにおいてEV購入時の補助金打ち切り(23年9月:社用車、23年12月:個人向け)〈関税〉・欧州委員会による中国製EVに対する相殺関税の暫定適用(最大45.3%)〈購入支援〉・新エネ車への買い替えに2万元の支援直近の動向〈購入支援〉・24年1月:適用厳格化により対象車種減少〈関税〉・24年9月:関税率引き上げ(25%⇒100%)〈購入支援〉・24年9月:ドイツにおいて新たな企業向けEV減税案を閣議決定(購入企業に対し最大40%の税額控除)※優遇税制の対象となるEV・ゼロ排出車の価格上限はこれまでの7.5万ユーロから9.5万ユーロへ引き上げ〈購入支援〉・24年7月:支援額引き上げ(1万元⇒2万元)電気自動車市場の動向電気自動車販売の伸び鈍化とその背景40.030.020.01Q3Q20201Q10.00.0▲10.0(3MA、1996=100)▲20.01251007550250▲30.0▲40.0HV147102020147102021(図表5)米・独 新車販売台数(うち電動車)(万台)(前年同期比、%)160(万台)8007006005004003002001000(※)HV:ハイブリッド車(出所) Marklines、IEA「Global EV Data Explorer」、「EV Outlook2024」(出所) Motor Intelligence、JETRO「ビジネス短信」、丸紅経済研究所「主要国・地域の電気自動車動向アップデート」、セントルイス連銀、FRB、ミシガン大学、各種報道等1357911202213579112023(%)35302520151050メリットデメリット135792024(図表3)主要国の新車販売に占めるEVの割合(%)4035302520151050(図表6)米国自動車ローン金利・延滞率(%)10.08.06.04.02.00.0(図表7)ミシガン大学マインド調査※2023年時点3Q20211Q3Q20221Q3Q20231Q3Q2024147102022147102023147102024政府の補助金や減税が適用されるCO2を出さないため、サステナブル自然災害時に蓄電池として使える走行音や振動が少なく、加速がスムーズ販売価格がガソリン車と比較して高い航続距離がガソリン車と比較して短い充電インフラが少ない充電に時間がかかるバッテリーの劣化・リセールバリューの低さ14012010080604020EVPHEVアメリカHVEVPHEVドイツ・地球規模での脱炭素や持続可能な社会の実現に向け、各国・自動車メーカーは電気自動車(EV)シフトを表明している。その中、EV販売台数は増加しており、足もとのEVの販売シェアは30%弱と成長してきている(図表1)。・環境面のメリットだけではなく、EVの性能向上(軽量化による航続距離延伸や高効率の電池・電動機の登場等)などもシェア増加の要因として挙げられる他、政府の補助金や減税が適用されており、ガソリン車と価格競争が出来ていることに加え、環境意識の高いアーリーアダプタ層による購入等も増加の一因と考えられる(図表2)。・EVの新車販売割合は国によって温度差があり、日本は各国比で出遅れている状況にある。国際エネルギー機関(IEA)の「EV Outlook2024」によると、各国政府が公表した政策や目標をもとにしたシナリオでは、「2035年のEV新車販売は世界の新車販売の5割超を占める」と予測されている。自動車産業のカーボンニュートラル(CN)目標に鑑みれば、日本においてもEVの普及は一層進むものと考えられる(図表3)。・2023年から2024年にかけ、米国・欧州各国政府は、税額補助等の個人向け購入支援の縮小を進めつつ、安価な中国製自動車に対する輸入関税を引き上げる等の動きを進めている。関税率の引き上げには、中国で生産された価格の安いEVが持ち込まれる、「デフレ輸出」に対する危機感が背景にあると考えられる(図表4)。・米国およびドイツにおける電動車の新車販売台数をみると、2024年に入ってからEVの販売台数の伸びがHV,PHEVの販売の伸びを下回っており、先述した政府による購入支援縮小の影響が表れたものと指摘されている(図表5)。・米国の自動車ローン関連データを確認すると、自動車ローン金利(5年)及び自動車ローン延滞率(30日)はいずれも高い水準にある。但し、米国における新車販売台数は斯かる状況下でも底堅く推移するなど、消費者マインドは悪くない。各国における所得環境の動向がEVを含む自動車販売の先行きに及ぼす影響は大きく、注視する必要がある(図表6,7)。(図表2)電気自動車のメリット・デメリット(図表1)世界の自動車販売台数(図表4)各国におけるEV関連政策の動向大臣官房総合政策課 西村 海生/大村 直人本稿では、電気自動車市場の現状と展望について考察する。 69 ファイナンス 2025 Jan.127電気自動車市場の現状と展望コラム 経済トレンド

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