ファイナンス 2025年1月号 No.710
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ファイナンス 2025 Jan. 68ファイナンスライブラリーライブラリー 応するかについては、様々なステークホルダーの納得、合意を得ることが大事であり、また財務省は現世代だけでなく将来世代をもステークホルダーとして考えていかねばならないという意味で深く関係があると気づきました。財政に限らずその背景にある経済や人口減少、環境問題など構造的な社会課題において、現世代と将来世代の間で摩擦が生じることもあります。フューチャー・デザインは、現世代と将来世代は利害の対立する関係ではなく、ひとつの人類史、地球史の流れの中の一参加者であることを思い出させてくれる素晴らしい考え方だと思います。出向元の金融機関では、サステナビリティ企画に携わっていたので、国家単位・地球単位でこうした持続可能性について考える機会をいただけて、貴重な経験になっています。(中村)現役世代と将来世代のコミュニケーションは財政の本丸の議論の一つだと思います。財政赤字を巡るデータや色パンによる説明も非常に大事ですが、フューチャーデザインのような議論の手法を紹介・提供して多くの方に主体的に議論してもらうことも有益だと思います。引き出しは幾つ持っておいても損はないはず。せっかく西條先生の著作を紹介する機会を頂いたので、次はファイナンス誌上でフューチャー・デザインの紹介をしてみては如何でしょうかね。最後にこども家庭庁からのお願いです。将来世代の意見反映という観点から、各審議会での若手登用を各省庁にお願いしています。財務省におかてれも、財政制度等審議会、外国為替等審議会、その他各種研究会でも何卒ご検討ください!財務省はその組織理念として「希望ある社会を次世代に引き継ぐ」「将来世代の視点に立つ」を掲げていて、元来将来世代や若者の立場に寄り添う組織ですよね。にも拘わらず、逆にそうした若者世代から距離があるとのイメージを持たれているとすれば残念だし勿体ない。今日ご紹介したフューチャー・デザインや審議会への若手登用に限らず、こうした組織理念を外から見える形で具現化する巻き込み方策を色々試してみても良いのでは。身の程知らずに余計なことを言ってすいませんが、応援しています。皆で創り上げていくものだという印象を受けます。財務省も自分達なりに試行錯誤しながらこの取組に関わっているところです。(中村)財務省でこの取組をトライすることになったきっかけは、財政審で小林慶一郎委員が、フォーリン・アフェアーズの巻頭言でイギリスの若手政治学者が矢巾町でのフューチャー・デザインを取り上げ、日本の小さな町での取り組みが世界に影響を与えるかもしれないと書いたことを紹介したことがきっかけだそうだね。(大本)はい。持続可能な財政や社会保障の在り方を考えていく上でも、次の時代を担うこども・若者世代を含めて、フューチャー・デザインを活用した議論に社会層を広く巻き込むことが望ましいというご提言のもと、足もとでは自治体の職員研修や学校に伺ってワークショップを行っています。また、フューチャー・デザインの考え方をより広め、自主的な取組を後押ししたいという思いから、フューチャー・デザインに関する情報共有のウェブサイト「はじめてのフューチャー・デザイン」(URL:https://www.futuredesign.go.jp/)を開設しました。(中村)霞が関でもその輪は広がっており、こども家庭庁も、こどもまんなか社会に向けた機運醸成(こどもまんなかアクションプラン)の一環として、昨年愛媛県で財務省と協力してフューチャー・デザインのイベントを開催し、好評を博しました。大本さんは官民交流の一環として金融機関から財務省の主計局調査課への出向ですよね。民間からの出向者に、こうした新しいプロジェクトを任せるというのは、財務省も前進(?)しているなと思います。やりがいもご苦労もあろうかと思いますが、率直なところを聞かせてください。(大本)私自身、着任してこの仕事を任された時は、お金に直接関係ないのになぜ財務省がこんな取組をするのかと懐疑的でした。ただ、財政を含めた国家運営に関わる構造的な課題について、いかに限られた資源を効果的に使って対「はじめてのフューチャー・デザイン」ウェブサイトQRコードはこちら☞

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