ファイナンス 2025年1月号 No.710
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ファイナンス 2025 Jan. 2 賃金上昇が物価上昇を上回る経済の構築に向けて、総合経済対策に基づき、適切な価格転嫁の促進のための下請Gメンによる取引実態の把握等に加え、新たに「下請かけこみ寺」の調査員との連携を図るなど、中小企業においても賃上げがしやすい環境を整備してまいります。令和6年度補正予算及び令和7年度予算では、中小企業をはじめとした事業者の皆様方の稼ぐ力を強化し、現下の賃上げができるよう、ITツール導入やシステム構築・設備投資の支援など、省力化・デジタル化投資の促進などの支援策を盛り込んでおります。賃上げの原資は企業の稼ぐ力であり、投資を促進することでその生産性向上を実現することが必要です。今後成長が期待される分野において、企業の予見可能性を高めつつ、戦略的かつ重点的な官民連携投資を進め、内外からの投資を引き出し、産業に思い切った投資が行われるように取り組んでまいります。具体的には、総合経済対策において、今後10年間で50兆円を超えるAI・半導体関連産業での国内投資を官民協調で実現するための「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定しております。令和6年度補正予算及び令和7年度予算等においては、先端・次世代半導体の国内生産拠点の整備や研究開発支援など、計1.9兆円規模の支援を実施することとしております。また、GXの実現に向けては、カーボンプライシングを償還財源とするGX経済移行債を活用し、20兆円規模の大胆な先行投資を行うことにより、10年間で150兆円超の官民協調投資を実施していくこととされています。令和6年度補正予算及び令和7年度予算においては、次世代太陽電池等のサプライチェーン構築等や次世代航空機技術開発など、計1.5兆円規模を計上したところです。予算のほか、財政投融資計画についても、日本経済・地方経済の成長のための取組等を加速させるために、必要な資金需要に的確に対応してまいります。令和7年度税制改正では、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応するための見直しを盛り込んでいます。まず、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額等の引上げを行うとともに、大学生年代の子等に係る新たな控除を創設し、子等の収入が増加した場合でも親等の控除が段階的に逓減する仕組みを導入します。この改正は、関係者の皆様にできる限りご負担をかけないよう、令和7年末の年末調整から適用することとしています。次に、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すため、売上高100億円超を目指す中小企業を対象に、中小企業経営強化税制を拡充し、対象資産に建物を追加します。また、法人版・個人版事業承継税制について、特例措置の役員就任要件及び事業従事要件を見直します。本年の干支であるヘビは古来、資産の象徴と言われておりますが、本年も引き続き、「資産運用立国」の政策を推進してまいります。家計における金融所得の推移を見ると、利子・配当は1994年度には約28兆円あったものが、足下では半減して約15兆円で推移しています。こうした金融所得を増やしてくためにも、貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押ししていくことが重要です。昨年1月から大幅に拡充されたNISAは、昨年1月から9月までの間に、口座数は、2,125万口座から2,509万口座と一昨年の約2倍のペースで、累積の買付額については、35.2兆円から49.0兆円と一昨年の3倍以上のペースで増加しています。今後も、より多くの方にこの新しいNISAをご利用いただけるよう、適切な活用を促してまいります。また、確定拠出年金(企業型DC、個人型(iDeCo))について、会社員の方の企業型DC・iDeCo全体の拠出限度額を、賃金の伸びを踏まえ7,000円引き上げることとし(1)賃上げ環境の整備と投資の促進(2)税制改正(3)「資産運用立国」

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