ファイナンス 2025年1月号 No.710
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SPOT (2024年10月25日)ファイナンス 2025 Jan. 644  世界銀行・IMF合同開発委員会(DC) 界経済の動向やIMFが果たしてきた役割、IMFの今後のあり方について議論が行われた。日本は、世界経済への認識や為替に関する日本の立場を表明するとともに、(1)低所得国支援、気候変動・パンデミック対応に関わる支援及び能力開発をIMFのコア業務と位置付けること、(2)同業務を支える持続的な財源確保策を検討すべきこと、(3)これらをコア業務と位置付けるのであれば同業務への加盟国からの財政貢献は、IMFの投票権の基礎であるクォータの算定要素とすべきこと等を主張した。以下、発出された成果文書の概要について紹介する。IMFCにおける議論の結果はコミュニケとして発出されることとなっているが、2021年10月の会合を最後に、コミュニケは発出されていない。今回も、各国間で粘り強い交渉と調整が続けられたが、声明冒頭の地政学的要因に関する文言について加盟国間での合意が得られず、「地政学以外の事柄については全メンバーで合意した」旨を明記した議長声明が発出された。地政学に関しては、ウクライナ、中東その他の「戦争及び紛争が世界的なマクロ経済・金融に与える影響について議論」し、「IMFCが、地政学的及び安全保障問題を解決するフォーラムではないことを認識」したとの文言が記載された。また、全メンバーが合意した世界経済の箇所において、「進行中の戦争及び紛争は世界経済に大きな負担を課し続けている」との文言を明記した。その他、クォータについては、第16次クォータ見直しの下での50%増資の発効に向けて加盟国が期限までに国内承認を得るべく取り組むべきこと、次回の第17次クォータ見直しの下で、計算式の見直しを含む幅広いアプローチを2025年6月までに取りまとめるよう取り組むことを再確認した。また、サブサハラ・アフリカ地域の発言権と代表制を強化する、理事会における同地域のための、25番目の新たなIMF理事を歓迎するとともに、IMFの新しい加盟国となったリヒテンシュタインを歓迎した。このほか、クリスタリーナ・ゲオルギエヴァ専務理事の2期目の5年間の任期の開始についても歓迎した。世界銀行・IMF合同開発委員会では、ブレトンウッズ機関の創設80周年を踏まえ、将来に向けた世界銀行グループの在り方について議論が行われた。特に、世界銀行グループは「より良く、より大きな銀行」を目指し、世銀改革とも呼ばれる業務モデル及び財務モデルの見直しを図る一連の取組を行っており、かかる取組の進捗報告が行われた。日本からは加藤財務大臣が出席した。以下、成果文書の概要について紹介したい。今回は、上述のIMFCと同様の経緯によりコミュニケ発出の合意には至らず、前回に引き続き議長声明としての発表となった。同声明では、世銀改革の進捗として、ハイブリッド資本やポートフォリオ保証等による財務能力の強化の進展を称賛するとともに、最低対貸出資本比率(E/Lレシオ)の引下げや「強化された請求払資本(ECC)」の創設を歓迎した。加えて、「居住可能な地球基金」の設立を歓迎するとともに、ドナーによる追加的な貢献を慫慂した。業務面では、新しいWBGスコアカードの運用開始や、国際復興開発銀行(IBRD)の金利体系の見直し等に対し支持を表明。更に、世銀が本年次総会の機会を捉えて発表したWBGジェンダー戦略2024-2030とその実施計画を歓迎した。IDAについては、そのインパクト重視の戦略的方向性と新しい政策パッケージを歓迎し、新規ドナーの参加を求めるとともに、強固で野心的なIDA第21次増資の完了へのコミットを表明した。日本国ステートメントでは、世銀改革の進展を歓迎するとともに、日本が世銀と取り組む知見共有や途上国の能力構築への貢献を紹介した。また、ロシアによるウクライナ侵略を非難しつつ、IBRD融資に対する信用補完等、日本の世界銀行グループを通じた支援を紹介。また、ウクライナ支援のための新たな金融仲介基金が世銀に設立されたことを歓迎し、今後とも同グループと連携しながらウクライナが必要とする財政ニーズや復興需要に対応していく旨を述べた。また、日本が特に重要視する地球規模課題について、国際保健、気候変動・インフラ、債務問題、太平洋島嶼国に関し日本と世銀が共同で実施する取組を紹介し、日本として支援を継続・強化していく旨を述べた。最後2024年IMF・世界銀行グループ年次総会及びG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要

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