SPOT2 G7財務大臣・中央銀行総裁会議 ロスボーダー送金の改善に係るFSBの取組、並びに暗号資産など新たなデジタル技術に係るFATFの作業を支持した。国際課税については、「2本の柱」の解決策の迅速な実施へのコミットメントを改めて表明するとともに、多数国間条約の早期署名のため、「第1の柱」のパッケージの交渉の迅速な妥結を奨励した。このように、今回のG20では、ますます複雑化する国際情勢にもかかわらず、多くの議題について建設的な議論が交わされ日本にとっても重要な主要論点について合意や一定の方向性を見出すことができた。今回のG7は、昨年7月24日にリオデジャネイロで開催された会議に続く、イタリア議長下における5回目の大臣・総裁級の会議となった。主な議題はウクライナ支援であり、今回も、ウクライナのマルチェンコ大臣の対面での参加も得て議論を行った。会議後、議論の成果をまとめた共同声明を発出した。日本からは加藤財務大臣・植田日銀総裁が出席した。以下、発出された共同声明の概要について紹介したい。世界経済については、ソフトランディングが依然として最も可能性の高いシナリオであるとの認識を共有し、為替を含む過去のG7における政策対応に関するコミットメントを再確認した。ウクライナ支援については、必要とされる限りの揺るぎないウクライナへの支援を再確認し、ロシアに対して戦争の即時終結を求めた。ウクライナへの財政支援に関しては、2024年6月のプーリア・サミットのG7首脳声明において、凍結されているロシアの国家資産から得られる特別な収益を活用し、「ウクライナのために支出する特別収益前倒し融資(ERAローン)」を年内に立ち上げ拠出することが表明された。G7財務トラックでは同首脳声明に沿って、G7のみならず世銀やIMFも含め、ERAローンに関する議論を重ねてきた。今回採択された共同声明では、G7財務大臣が約500億米ドル(450億ユーロ)をウクライナのために支出するERAローンイニシアティブの原則と技術的事項を承認したことを発表し、併せて、別途「ERAローンイニシアティブに関するG7財務大臣声明」も採択・公表した。なお、同声明と同時に、G7首脳声明も公表された。中東情勢については、ガザの人道状況の悪化やレバノン情勢等に深刻な懸念を表明した。人工知能(AI)については、金融システム及び経済へのリスク最小化も含む、安全、安心かつ信頼できる方法で、AIを生産性と成長の向上に活用するための議論を推進することへのコミットメントを確認した。また、G7への報告書を作成するために設置したハイレベル専門家パネルによる、AI、経済及び金融の政策立案に関する報告書への期待を表明した。国際租税協力については、「第1の柱」の実施は最優先事項であること、そして、早期に多数国間条約に署名するため、OECD/G20「包摂的枠組み」において利益Bの未解決問題を解決することへのコミットを確認した。また、国際租税協力に関する国連枠組み条約のための基本的事項が採択されたことに留意し、コンセンサスに基づく意思決定をする重要性を再確認した。これらに加え、MDBs、債務、保健、金融セクター等に係るG20における取組の歓迎・支持を表明したほか、共同声明の最後には、日本議長国下での成果を踏まえ、ウェルビーイング等を進める政策の採用について検討する第7回OECDウェルビーイング世界フォーラム(2024年11月開催)への期待も表明された。上記の通り、G7間で率直な議論が行われた結果、ERAローンの枠組み具体化を含む、多くの成果を得ることができた。年次総会の終盤となる10月24日から25日にかけて、第50回国際通貨金融委員会(IMFC)*2が開催され、日本からは加藤財務大臣と植田日銀総裁が出席した。会合では、2024年がIMF設立に合意したブレトンウッズ会議から80周年にあたることも踏まえ、世3 国際通貨金融委員会(IMFC) (2024年10月24日〜25日)(2024年10月25日)*2) 国際通貨金融委員会(IMFC)は、国際通貨および金融システムに関する諸問題について、IMF総務会に助言および勧告を行うことを目的として、1999年に前身であるIMF暫定委員会を常設化・改編することで設置された。通常春と秋の年2回開催。各IMF理事選出国・母体を代表する大臣級の委員24名から構成される(現在の議長はサウジアラビアのアルジャドアーン財務大臣。日本からは加藤財務大臣がIMFC委員として参加)。 63 ファイナンス 2025 Jan.
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