SPOT ファイナンス 2025 Jan. 62国際機構課長 池田 洋一郎/係長 竹川 優記/係員 原田 龍夫開発機関課長 津田 尊弘 /係長 後白 翼2024年10月21日から10月26日にかけて、米・ワシントンにおいて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。これらの会議は、第79回IMF・世界銀行グループ年次総会(以下、「年次総会」)に合わせて開催されたものである。以下本稿では、各会議での議論の概要を紹介したい。今回のG20は、昨年7月25~26日にリオデジャネイロで開催された会議に続く、ブラジル議長下における4回目かつ最後の大臣・総裁級会議となった。日本からは加藤財務大臣、植田日銀総裁が出席した。初日のセッションでは、国際開発金融機関(MDBs)及び金融セクターに関する議論が行われた。2日目のセッションでは、G20財務トラックの立上げから25年目になることも踏まえ、G20の役割や世界経済等に関する幅広い議論が展開された。本セッションにおいて、日本は、ロシアによるウクライナへの不法な侵略はG20の基本的精神と全くそぐわず、世界経済の不確実性を高めている大きな要因であり、最も強い言葉で非難する旨、発言した。併せて、足元では為替市場等の金融市場の変動が引き続き高い状況が続いており、G20として、各国のマクロ政策のスピルオーバーや、投機がもたらす為替市場での過度な変動に注意を払う必要がある旨、主張した。会合では、2024年7月に引き続き、全てのメンバーの合意に基づく共同声明が採択された*1。共同声明は、世界経済について、ソフトランディングへの良い見通しがある一方、下方リスクとして、戦争と激化する紛争、経済的分断等が存在するとの認識を示した。また、マクロ経済政策運営における負のスピルオーバーの軽減を確認したほか、為替についても、「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る」とのG20における既存のコミットメントを再確認した。MDBsに関しては、「より良く、より大きく、より効果的なMDBs」に向けた「G20 MDBロードマップ」を策定・公表した。また、民間資金、国内資金の動員強化に加え、MDBの自己資本を最大限活用する取組であるCAFレビュー継続の重要性に合意した。また、世界銀行グループの国際開発協会(IDA)における、強固で効果的な第21次増資(IDA21)の達成への期待を表明した。債務問題では、「G20共通枠組」下での低所得国向け債務措置の実施強化へのコミットメントと併せて、「共通枠組下の事例から得られた教訓に関するG20ノート」を策定・公表した。また、スリランカの債務措置の合意や、債務透明性の向上に向けた取組を歓迎した。併せて、共同声明は、短期的な流動性課題に直面する一方、債務は持続可能である脆弱国に対する支援を国際社会に要請した。国際保健については、2024年10月のパンデミック基金の増資イベントにおけるドナー層の拡大を通じた支援の拡大への期待を表明した。金融セクターについては、国際金融規制改革の適時の実施への強いコミットメントを再確認した。また、ノンバンク金融仲介セクターの脆弱性への対処や、ク巻頭文1 G20財務大臣・中央銀行総裁会議 (2024年10月23〜24日)*1) 地政学に係る文言については、7月会合と同一の議長声明を共同声明とは別に発出。2024年IMF・世界銀行グループ年次総会及びG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要
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