SPOTち込んだ時期がありました。だいぶ気持ちが沈んだのですが、あるとき急にポジティブになって(?)、「そうか、自分は話せないんだ!」と正面から認めたら、そこからは上に上がるだけであることに気づきました。今でもうまくいかなかったら、いちいち落ち込むのではなく、「自分はまだこういうところが修練・経験不足だった、次はこう改善しよう」と思うようにしています。なお、今申し上げたのは学び始め・学び直しの方向けのアドバイスですが、実際に英語で交渉する立場となると、英語が単に喋れるだけではだめで、ディベートスキルというか、議論するためのスキルのようなものも必要になってくるんですよね。例えば、カウンターパートと自由討議というかやり取りを何往復かする時には、「型」みたいなものがあって、世銀にいた際に、世銀の幹部や他国の理事の人達のやり方を見様見真似で学びました。コロナ危機だったので、バーチャル面会をどうすすめるのが一番効果的か、なども随分と考えました。また、面会の締め方も重要です。いい意見交換ができましたね、バイバイ、ではなくて、こういうことをお互い確認できましたね、ネクストステップはこちらは○○と××、そちらは▲▲ですね、それはいついつまでにやったうえで次回またテレコンしましょう、というのをこっちが必ず言うようにしているんですよ。そうすると、こっちがコントロールしている感じになるんですよね。あるいは細かい話はチームメイトにふってしゃべってもらって、その間に自分は別の観点のコメントを考えるとか、そういうテクニックもあるんです。ここらへんは慣れ、場数です。頑張ってください。なお、特にコロナ危機後によかったなと思うのは、バーチャルの面会が常態化した点ですね。私が日本に戻ってきて特に思ったのは、(やや大げさにいうと)昔は、海外出張に行きました、そこで誰かと面会しました、そして帰りました、時々電話します、こういう感じでした。今では、これについて意見聞きたいな、これについてちょっと伝えたいなとなったら、数日後にバーチャルで話すことができる。そういったインフォーマルなやり取りも通じて、世界の潮流に自分の頭をキャッチアップさせるよう努めています。服部:学生と話していると、東大生でも国際機関に行くというイメージを抱けていないような感じがするのですが、それはどう思われますか。津田:いや、自分が学生だった時を振り返っても、全くイメージ出来ていなかった。遠すぎると思うんですよね。その意味でも、少しでも身近に感じられるような仕掛けや取組を進めていきたいと思います。服部:遠すぎますよね。でも、日本が様々な国際機関に対する2番目の出資国である事実などがある中、他国に比べて日本人には希望者が少ない印象もあるので、チャンスがあるんじゃないかと思います。津田:チャンスはあります。国際機関に行きたい方にいつもお伝えしているのは、中期的に計画いただくことです。来年行きたいですとか、あるいは学部卒業したら行きたいですとか、学部を卒業して大学院に2年行って、その後すぐに行きたいですといってもなかなか行けるとは限りません。じゃあ、実務経験を5年ぐらい積んでから行こうと。であれば、その5年間の経験はどこで積むのとか、その間に留学費用としてどの奨学金制度を使うとかを、タクティカルに(戦術的に)考える。そういうことをふわっとではなく、「自分ごと」としてリアルに考えて頂ければと思います。服部:修士課程は行った方が良いと思われますか。津田:国際機関に行くうえで必要か、という観点にしぼっていうと、私は学部が終わった後にすぐに行く必要はないかな、行くのであれば、実務経験を積んでからの方がいいんじゃないかなとは思います。また、一口に修士といっても、どの大学のどのコースか、というのが当然重要になってきます。服部:今回は津田課長に国際金融と経済協力についてお話を伺いました。ありがとうございました。津田:ありがとうございました。「世界と常に繋がっている」感覚がするんですよね。津田尊弘課長に聞く、国際金融と経済協力 61 ファイナンス 2025 Jan.
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