SPOTなく知っている」とか「そういう部署に昔いた」ではなく、その分野なら「世界で戦える」というものです。それを真ん中に据えて、その一本刀の付加価値の提供と引き換えに、他の人からの知識や専門性も、わらしべ長者のように獲得していく。自分ができているかというと疑問ですが、そういうプロフェッショナルを目指すことができる機会が与えられているのは、とてもありがたいという思いです。学生:専門性というところに関連して、他国では博士号を持っている人を公務員として雇ったり、他業種からも引っ張ることがあるのに対し、日本は新卒で入れて育てる文化があると思います。このような日本のやり方の強みや、他国と比べて弱いところを教えて下さい。津田:こればかりは、国の文化や労働市場のあり方と直結しているので、あまり断定的なことは申し上げられませんが、どこの国でも公務員の世界では、経験を積んだ人がだんだん上がっていくというのは割と一般的にみられることだと思います。それでいうと、日本の場合は、様々な経験を積んで、上に上がっていく機会というのは、案外他の国よりもあるように思います。例えば国際機関だったり他の国の政府だったりで、同じところにもう何年もずっといる人もいます。外国の場合そこらへんは割り切りで、管理職とそれ以外の職務内容(TOR:Term of 仕事」「小さな仕事」に分けて、「小さな仕事」もやりがいがありますよ、と伝えたのですが、一方、若いうちに「大きな仕事」の一翼を担うことができるのは、いいトレーニングではあると思います。下積み含めて無駄なことは何1つなかった。課長というマネジャークラスになってそう思いますね。専門性とは、常に変化を続ける時代に対応するものである、という一例として、最近は経済安全保障とか、経済・金融面でのインテリジェンスの重要性というのは高まっていて、そういう問題にも、従来型の知識の積み重ねだけでは対応できなくなっています。ロンダリング対策や犯罪によって得たお金の追跡や没収に関する国際枠組づくりにたずさわりましたが、その後、テロリストやテロ団体の資金凍結制度やその運用方法なども進化が進んでいて、自分の知識や経験も陳腐化しているのを感じます。ユーラシアグループというシンクタンクの代表のイアン・ブレマーが「Weaponization of finance」という言葉で、金融システムを安全保障上の目的で積極的に使う現象を表現したのがかれこれ10年近く前。足元ではもっと多角的で複雑な制度ができており、これらも既存の政策分野の過去の知識の集積だけでは対応できないですね。あと、ちょっと違う角度の話になるかもしれませんが、国際機関のトップに行くような人たちは、やはり色々な経験をしていますね。シンクタンクにいましたとか、大学にいましたとか、NGOにいたとか、CV(履歴書)を見ると色々な人がいます。日本でも、そういう複層的、複線的なキャリア形成があると、人材の幅がもっと膨らんでいくと思います。私自身も、アカデミアとの接点として、自分のリサーチに加えて、先生の講義に呼んでいただいたのはありがたかったですし、留学生も含めた英語のゼミのゲストスピーカーの経験も、いつも楽しんでやっています。服部:日本人は国際機関で働くチャンスは多いとおもいますが、英語がネックになることが多いのではないでしょうか。津田:おっしゃるとおり、私含め日本人は英語を頑張る必要はありますね。逆に英語ができると武器になります。あと必要なのは、ちょっと話が前後してしまうんですけれども、国際機関に行くならやっぱり専門性がどうしても必要になります。学生の皆さんにいつもお伝えしているのですが、国際関係論とか開発学とかそういう分野だけ修めていると、世銀が何をやっているかについて詳しくはなるんですけれども、一スタッフとして国際機関に行きたいというときに役立つ武器かというとそうとは限らないんですね。先ほどの一本刀と他の分野の知識の獲得の話でいえば、そういう学問は、いわば他の分野の集積であって、一本刀がないとスタート地点に立てないです。例えば、「私は開発ミクロ経済学、特に離村の貧困度合の測定を研究したエコノミストです」「私は気候変動、特に大気の状況の専門家です」「都市開発の専門知識があります」など、なんでもいいのですが、自分を定義づけるものが必要だと思います。Reference)が割ときれいに分かれている。プロコン(賛否両論)あると思いますけれども、先に「大きな15年ほど前に法務省に2年間出向して、国際マネー 59 ファイナンス 2025 Jan.
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