SPOTBank)もありますが、これはBRICSが資金を出して、BRICSに融資している感じですね。「G7伊勢志摩原則」として発表されました。ただ、仮「質の高いインフラ投資」という概念がG20首脳の成世界には国が190カ国ありますから、G20に入ってない国もたくさんあることを忘れてはいけません。世銀の理事代理のときは、今度はそういった国に、G7やG20で合意した内容を丁寧に伝えていく必要性も学びました。G7やG20で決まったからやろうよ、とだけ言っても、こっちは関係ないよ、となってしまいます。そうではなく、それはこういう意義があるんだよ、とか、僕らだけではなく、皆さんの開発政策の検討にもこういう大きな影響があるんだよ、ということを説明してまわったこともあります。先進国の協力枠組や途上国も含めたG20のような枠組の中での立ち位置、さらに世界各国との距離感、ここら辺は財務省の先輩と僕で話していても感覚が違うときもありますし、皆さんのような若い方々が私くらいの年齢になったときに、私と感覚もずれてくる可能性も大いにあると思います。私自身ができていないことを言ってはいけないのですが、皆さんには先を見ていく目を養って欲しいと思います。服部:神田(2021)の7章には、気候変動や環境問題も入っていますが、この本では開発政策や経済協力という位置づけをしているという印象です。この前、津田課長が東大でご講演された際には、かなり気候変動については思い入れが強い印象をうけました。津田:そう見えるかもしれませんね。国際的な場で議論していますと、気候変動イコール開発、開発イコール気候変動のような形で議論されることが多いです。服部:津田課長が気候変動問題について意識を強めたのはいつ頃からですか。津田:世銀にいた頃(2020年~2023年)からです。私の在任中に世銀も組織として「気候変動行動計画(CCAP:Climate Change Action Plan)」を決定するなど、議論が盛り上がっていました。気候変動と一口に言っても、色々な切り口があります。例えば、気候変動の世界でいう「適応」(adaptation)というのは、例えば、気候変動の影響で台風が来ました、ダムが壊れました、なので災害に強いダムを造りましょう、ということですから、これは僕らが昔からその重要性を訴えてきた「防災」の世界と強い結びつきがあります。気候変動対策を進めるべきか否か、ではな続けています。AIIB以外の、新興国発の開発銀行として、BRICS参加国が設立したBRICS開発銀行(New Development 服部:新興国との関係も最近変わってきているのでしょうか。津田:そうですね、色々なパターンがあるのですが、G7でアイデアを出して、G20に広げていくということをやったことがあります。日本がG7議長国を務めた2016年に打ち出した「質の高いインフラ」という概念があります。例えば、橋を作るとします。仮に、すぐ壊れるような橋を作ってしまったとした場合、維持管理や補修費用などを含めると、最終的に必要なお金が大きくかかってしまいます。一方、建設当初から質の高いインフラを整備すると、インフラのライフサイクルで見るとコストは抑えることができる。また、しっかりとしたインフラ投資であれば、現地で工事現場の人の雇用を生み出したり、村と村の間の物流経路をつなげてポジティブな経済効果を生み出したりすることができます。これを「質の高いインフラ投資」と呼んで、広めていきました。この概念はG7伊勢志摩サミットでエンドースされ、に「G7だけの概念ですよ」というのを前面に出しすぎると、それだけで抵抗を感じる国も少なくありません。新興国含めて多くの人たちを巻き込むのは重要で、同じ年に開かれた2016年の杭州サミットでは、果文書に初めて入りました。G7発でアイデアを出して、G20のメンバーに共有された目標へと転換していくことができた背景の一つには、我々の地道な働きかけもありました。最終的にこういった流れは、3年後の2019年の大阪サミットで日本が議長国を務めたときに、「G20質の高いインフラ投資原則」として結実しました。私自身2016年のG7議長国と2020年のG20議長国の両方にたずさわることができましたが、G7で種を蒔いた話が、G20の大きな成果につながったというのは、今振り返っても非常に感慨深いものですね。また、G7やG20で決まったことは重要なのですが、気候変動問題について 55 ファイナンス 2025 Jan.
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