ファイナンス 2025年1月号 No.710
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□SPOTることも大切だと考えています。例えば、他の国に先駆けて、日本があるファンドに拠出しますということを発表すると、額がそれほど大きくなくても、やっぱり日本は頼れるドナーですね、となるんですよね。それは、ただ感謝されるということを超えて、皆がいる会議の場で、開発の議論と政策をリードしているのは日本だと言ってくれた時のインパクトは小さくはないですね。服部:神田(2021)の7章の序盤に、中国が設立したアジアインフラ銀行(Asian Infrastructure Investment Bank, AIIB)について議論がなされます。AIIBについては、日本が参加するか否かということで一時的に大きく報道されていた印象です。神田(2021)では、「アジア地域のインフラ整備を主な目的とする国際機関であり、2013年10月、習近平国家主席が東南アジアを訪問した際に設立を表明したものである。中国は設立表明以降、2014年1月より、アジア・中東各国との事務レベル協議を開催。2015年に中国を含む57か国が原加盟国となり設立し、2016年に業務を開始した。2021年4月現在の加盟国は103か国となっている。このように加盟国は拡大したものの、中国が依然として、出資ベースで3割、投票権ベースで約26.6%の圧倒的なシェアをもっており、特別多数(3/4以上)の議決が必要な事項(増資や総裁選任等)において拒否権を持つ構造である」(p.300)と説明されています。これまでADBについてはたびたび触れてきましたくの改革が進められています。この流れをうけて、G20でもMDBsが本格的に議論されはじめました。図表4にもありますけれども、インドネシア、インド、ブラジルと、過去3年くらい全部途上国が議長国になっていて、MDBsというのは有効な支援機関である、かつ、もっと有効になりうるのではないか、という認識が高まってきています。全くの私見ですが、今回冒頭でお話した、「MDBsは銀行である」、したがって、政府による1ドルの出資が、債券発行等を通じて、例えば5ドルの貸出として、途上国に流れる、したがって他の国際機関よりもはるかにfirepowerというか、融資余力を大きく出せる機関であるということの認識が広まってきたこともあるのではないか、と思います。学生:日本はここまで安定して国際協力をしている印象です。しかし、2024年の大統領選も経て、アメリカなどの方針も見通せない中で、今後も日本は安定的に貢献出来ていきそうでしょうか。津田:なかなか難しいところですが、資金をだす正当性があるかどうかというところを、政府サイドも一層丁寧に説明していかないといけないし、あるいは国際機関の側でも、こういうことをしていきます、それは途上国にはこういう利益になります、とか、日本を含むドナー国の要請にはこういう形でお応えしています、という説明をきっちりしてもらう必要が高まっていると思います。その時に重要なことは、日本企業が直接利益を得るようなビジネス機会を生み出していくことも1つですが、それに加えて、日本の意見が通りやすい環境を作AIIBとADBの役割□□□財務トラックにおける優先課題として外部専門家が、□□□の既存資本の最大限の活用に向けて提言。外部専門家が、□□□の融資余力を3倍にすることを含む提言。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□が引き続き最優先課題に。□□□□□□□□□□□□□□□を支持。図表4 近年のG20議長国インドネシア議長国(2022年)インド議長国(2023年)ブラジル議長国(2024年) 53 ファイナンス 2025 Jan.

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