□SPOT ファイナンス 2025 Jan. 52専門用語でHumanitarian-Development-Peace Nexus、つまり、世銀等がやっているDevelopmentの仕事、国連等がやっているHumanitarianや平和構築の仕事というのは、相互補完性を持っているという認識が確立しています。津田:少し時事ネタになるのですが、最近世銀のミッションが見直されたことをご紹介したいと思います。ミッションとは、私たちはこういうことを目指します、という高次の目標のようなものですが、従来は世銀のミッションは2つありました。1つは、「End Extreme Poverty」、すなわち、貧困をなくそうというものです。もう1つは、日本語にすると分かりにくいんですが、「Boost Shared Prosperity」(繁栄の共有)と呼ばれるもので、これは全ての国の低所得層40%の所得を増加させること、と定義づけられています。この2つをあわせて、Twin goalsと呼んでいます。「End Extreme Poverty」のほうは、ともかく貧困をなくすことが目的ですが、2つ目は、中所得層の人々を含めて、底上げを図っていきましょうという意味です。今さらっと説明しましたけれども、この2つの目標を両方達成するということは、有限の資源を使って、本当に貧しい人を救うことに主眼を置くのか、全体の底上げを優先するのか、低所得国支援と中所得国支援をどの程度バランスさせるのか、等々、割と一筋縄ではいかない問をはらんでいます。これらに昨年、「On a livable planet」という文言が追加されたんですね。字義通り翻訳すると、ちゃんと生きていける地球にしなくちゃだめだよということですが、昨今の地球環境問題、気候変動問題の高まりを受けて、グローバルな課題にしっかり対処していく必要が認識され、ミッションの改定につながりました。個別の国の開発ニーズ(需要)、例えば、インドネシアがこういうことをやりたい、ザンビアはこういうことをやりたい、というのに応えるだけでは、地球全体の問題を解決できない可能性があります。経済学の言葉を使えば、「外部性」(externality)があるということです。こういった問題への対処を世銀としてもやっていこう、ということ正面から認めたという意味で、大きな方向性の転換だと私は思います。これとも関連しますが、あわせて、2,3年前から進んでいる「MDB改革(MDB Evolution)」というムーブメントをご紹介したいと思います。これは、「MDBsによる気候変動や国際保健等の地球規模課題への対応強化を通じて、開発効果の最大化を図る取組」と説明されますが*4、現在MDBsのビジョン、オペレーション、財務モデルの見直しが進められています。今までの積み上げも大事にしており、Revolution(革命)ではなくEvolution(進化)という呼び方をしているのが面白いなと思っています。新しい金融手法や、他機関とのパートナーシップとの強化など、多世銀のミッション世銀のミッションから読み解く開発課題□□□□年に策定された「二大目標」(□□□□□□□□□□)・極度の貧困(□□□□年の物価水準で□□□□ドル)を撲滅すること・すべての国の低所得国層□□□の所得を増加すること□□□□年に追加・二大目標は居住可能な地球で実現※気候変動等の持続可能性を加味図表3 世銀のミッションから読み解く開発課題□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□(「極度の貧困の撲滅」と「繁栄の共有の促進」を居住可能な地球で実現)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□・従来は、国ごとのニーズを把握し、それに対処するのが□□□sの使命・気候変動やパンデミック対応など、個別の国のニーズに還元しえない課題(「外部性」(□□□□□□□□□□□))への対応が急務となっている。津田尊弘課長に聞く、国際金融と経済協力*4) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-foreign_exchange/proceedings/material/20240318_3.pdf
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