ファイナンス 2025年1月号 No.710
55/116

□SPOT ファイナンス 2025 Jan. 50余談ですが、MDBsの中には、このnon-concessionalな部分とconcessionalな部分を扱う機関や部門を分けているところがあります。MDBsの代表例である世銀を例にとると、中所得国政府への支援については国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development, IBRD)が行い、低所得政府への支援については国際開発協会(International Development Association, IDA)という部門が行うという形で分担しています。またこれらはどちらもソブリン(政府)に対して支援を行う機関ですが、民間支援については、国際金融公社(International Finance Corporation, IFC)という機関が投融資を行い、多数国間投資保証機関(Multilateral Investment Guarantee Agency, MIGA)という機関が保証を提供する、という風に役割分担をしています。なお、今申し上げた区分ははじめての方向けに非常に単純化したもので、正確にはもうちょっと細かなデマケーション(役割分担)があることは付け加えさせてください。最後に、特徴の3点目として、非金融的な支援手法に言及したいと思います。一例として、貸出を受ける国との政策対話(Policy Dialogue)が挙げられます。ここでは世銀に特化して説明します。先ほどMDBsは貸出をすると説明しましたが、その貸し方には、大きく分けて2つあります。1つは「Investment Project Financing(IPF)」と呼ばれるもので、その名の通りプロジェクトに資金提供を行うものです。例えば、橋や学校や病院を作ります、地震が起きた時に復興支援に資金を出します、という風に、用途となるプロジェクトが決まっているものです。一方、特定のプロジェクトに紐づけず、優先順位の高い「政策分野」に資金を提供するものを、「Development Policy Financing(DPF)」と呼びます。もちろんプロジェクトに特化しないからといって、ただ財政資金の足らず米を埋めるだけでなく、政策協議を通じて、開発効果の高い政策はどのようなものかを、相手国と世銀で決定します。その際に、政策をより良い方向に結び付けるように世銀にある専門的な知見を提供したりします。つまり、MDBsは、お金の出し手であるだけでなく、知見の提供者でもあるということです。また、ちょっと聞き慣れない言葉からもしれませんが、「Convening power」も、支援手法そのものではありませんが、MDBs、特に世界銀行が有する重要な機能としてしばしば言及されます。Conveningとは「集まる」という意味なのですが、国際金融、経済開発、あるいは外交の場では、特定のイシュー(論点)を議論するために集まるという場がそもそもないことが少なくありません。何かを決める場合に、様々なレベルの専門家や政策担当者が集まる必要がでてくるわけですが、MDBsはそういう場を加盟国に提供する力があると言われています。もちろん場を提供すればすぐに解決するわけではないのですが、不確かな時代、前例がないことが数多く起きる時代にあっては、そもそもどういう場で議論するかというところから検討をしなければいけないときも多く、そういう議論をする場を提供できるというのは非常に大きな特色だと思いますね。服部:初学者がつまずきやすい部分ですが、世銀グループというのを見た時に、世銀という法人があるわけではなくて、このIBRD、IDA、IFC、MIGAがあるわけですよね。津田:正確には、世界銀行というのは、IBRDとIDAの二つの部門を合わせた機関になります。それに、(出所)財務省図表2  世界銀行グループの概要国際復興開発銀行(□□□□)○中所得国及び信用力のある低所得国を対象○市場から調達した資金等で長期融資を供与国際開発協会(□□□)○低所得国支援に特化○加盟国からの出資金・市場調達資金をもとに、超長期・低利の融資・グラントを供与○通常□年ごとに増資○担当副総裁:西尾昭彦国際金融公社(□□□)○市場から調達した資金等で、途上国の民間案件に投融資を供与○□□□長官:マクタール・ディオップ(セネガル)多数国間投資保証機関(□□□□)○途上国向けの民間投融資に、ポリティカル・リスク保険を供与○□□□□長官:俣野□弘津田尊弘課長に聞く、国際金融と経済協力

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る