□SPOTう銀行であるという点です。3点目は、融資以外の機能(非金融手法)もあるという点です。順を追ってご説明します。まず、一点目の「銀行である」という点。なんだか当たり前すぎるように聞こえるかもしれませんが、非常に重要なポイントです。銀行のバランスシートから議論したいと思います。バランスシート(貸借対照表)とは、お金の出入りをある一時点、ストック(残高)という観点でみたものですが、商業銀行のバランスシートを見ると、大まかに言って、右側(調達)で出資(Equity)並びに預金及び債券収入(Debt)を受け入れ、それをもとに、左側(運用)で貸出等を行っています。MDBsのバランスシートも、これとのアナロジー(類推)で考えることができます。MDBsのEquity、すなわち資本金というのは何だと思いますか。学生:政府からの資金でしょうか。津田:そうですね、政府からの資金拠出です。そして、この資金をそのまま融資に使うということではなくて、MDBsは、商業銀行と同様、その資本金に加えて、債券発行によって得たお金や剰余金も加えることで、元手である資本金の数倍の融資を可能にしています。これを専門用語で「レバレッジ」と言います。MDBsがレバレッジをかけている、すなわち、政府からの拠出だけでなく自前の資金調達も行って、融資量を拡大している話は、知らない方は結構多いのですが、「MDBsは銀行である」ということから導き出すことができるんですね。特徴の2点目として、MDBsは銀行ではあるのですが、途上国への貸出を行う機関ですから、普通の銀行とは違います。貸出先が政府、その内容が公共政策的なもの、というのは、すぐ思い浮かべることができる人も多いかもしれませんが、ファイナンス面でも違いがでてきます。例えば、各国政府が出資をしていますから、財務状況の信用度が極めて高いといえます。MDBsは預金やローンの受入れというのはやっておりませんで、債券を発行していますが、この高い信用をもとに低金利で債券を発行することができます。結果として、バランスシートの右側で調達コストが低く済みますので、バランスシートの左側で、途上国向けの比較的低い金利での貸出が可能になるわけです。なおいま「低い金利」と申し上げましたが、これはMDBsが政府からの資本金を元手にしていたり、その高い信用力をもとにした低金利調達を行っていたりするからであって、常に損失覚悟で金利を下げているとは限らないんですね。ただ、本当に貧しい国に対しては、調達金利よりも低い金利の貸出や無償援助を提供していることがあります。こういった支援のことをconcessional(譲許的)と呼ぶことは、前回申し上げました。多くのMDBsが、支援対象国の所得水準等に応じ、non-concessionalな支援とconcessionalな支援の両方を提供しています。マルチ開発金融機関(□□□□:□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□)※日本が加盟しているもの図表1 マルチ国際開発金融機関(MDBs:Multilateral Development Banks) 49 ファイナンス 2025 Jan.
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