SPOT/デカップリング、管理/勝利などの重要な争点があには共通点が大きいものの、それでも、デリスキングる。そして、経済学者と一部の国際政治学者の間から、対中政策の慎重な吟味を求める声が上がっている。アメリカの社会科学者の中国観もひとつに収斂していない。そして、アメリカが世界への関与に躊躇をみせるなかでも、人類の存続に関わるグローバルな課題への危機感が表明され、欧州の専門家とも協力しつつ、グローバル・ガバナンスの模索を続けている。第二に注意を寄せたいのは、この言論の自由市場の公開性の高さである。ロシア、中国への制裁への考え方、(コラム2.6で検討した)war gameは広く公開され、その含意はだれもが参加可能なカンファレンスで討議されている。対外投資規制などの新しい規制の導入に際しては、民間企業などは様々な説明を受け、意見を申し述べ、連邦議会では政府案への批判や代案が取り上げられる。友好的ではない外国を対象とする施策について、あけっぴろげな議論が行われていることは実に印象的である。個々の専門家にとって成果を世に出すことは、業界でのポジショニングを高めるのに必要なステップである。個人的動機にも基づく活動は、相手国に手の打ちをみせることになり、ミクロでの弊害がないとも言い切れない。しかしながら、縦横斜めから施策を叩き、政府内外の社会科学者や議会関係者の知見を組み合わせることで、より良い施策に近付くことができる。また、安全保障は重大事であるから、広く国民一般の理解は欠かせない。とりわけ、経済安全保障のような民間の経済活動に関わることには、民間も多大な関心を寄せている。この第二の点は、第三の点、言論の自由市場のより広い外部との関わりへと我々を導く。政権内外の社会科学者、議会の関係者に開かれているとは言っても、一定の方法論を共有する専門家の間のことに過ぎない。現在ますます問題になっているのは非専門家との関係である。貿易を巡る議論が経済学者にとって不満足なものとなって久しい。チャイナ・シンドロームに捉われている人々に、どうすれば経済学者の言葉を届けることができるのか。人類の存続を図るために、我々はますます専門家の力を借りるほかない。気候変動問題でも、保健の問題でも、専門家がなにかずるいことをしているわけではないことを人々が理解するにはなにが必要なのか。いまや政治を取り上げるのに良いところまで議論が進んだようである。次回以降、二回にわたり、アメリカの政治と民主主義についての議論へと進む。(次号につづく)(謝辞)本稿の第三回、第四回の執筆に際し、以下の方々と個人的に意見交換させていただき、実に実り豊かな時間を頂戴した。記して感謝する。秋元諭宏(Sasakawa USA)、ダロン・アセモグル(MIT)、ティム・アダムス(IIF)、マスード・アハメド(CGD)、グリゴーレ・アレクサンドル(SIDLEY)、グレゴリー・アレン(CSIS)、伊藤嘉秀(Mayer Brown)、デイヴィッド・ヴィクター(UCサンディエゴ)、スティーブン・ヴォーゲル(UCバークレイ)、アンドリュー・ウォルダー(スタンフォード大学)、アナ・ウォン(ブルームバーグ)、ジョナサン・ウエイクリー(COVINGTON)、チャーリー・ヴェスト(ロジウムグループ)、ジョン・オーウェン(ヴァージニア大学)、大越匡洋(日本経済新聞)、デイヴィッド・オーター(MIT)、ステファン・ガーディナー(ワシントン大学)、チャールズ・カプチャン(ジョージタウン大学)、ロバート・カプロス(財務省)、ケント・カルダー(ジョンズ・ホプキンス大学)、ラビ・カンバー(コーネル大学)、スコット・キーフ(ジョージワシントン大学)、ティモシー・キーラー(Mayer Brown)、メアリー・ギャラガー(ミシガン大学)、エミリー・キルクリーズ(CNAS)、マシュー・グッドマン(CFR)、ジェイミーソン・グリア(King & Spalding、通商代表(予))、サラ・ゲアリング(ワシントン大学)、アナ・ゲルペン(ジョージタウン大学)、スコット・ケネディ(CSIS)、小西秀男(ボストンカレッジ)、斎藤ジン(Observatory)、デイビッド・サックス(CFR)、ローレンス・サマーズ(ハーバード大学)、サミュエル・シェフラー(ニューヨーク大学)、デレク・シザーズ(AEI)、アイヴァン・シュレーガー(Kirkland & Ellis)、ロバート・スターヴィンス(ハーバード大学)、ミレア・ソリス(ブルッキングス)、ラリー・ダイアモンド(スタンフォード大学)、高木優(NHK)、デイヴィット・ダンクス(UCサンディエゴ)、ビクター・チャ(ジョージタウン大学)、ジョー・ディクソン(財務省)、クリスティーナ・デイビス(ハーバード大学)、ジェラルド・ディピッポ(ブルームバーグ)、デイビッド・ドラー(ブルッキングス)、フランチェスコ・トレビ(UCバークレイ)、ダニエル・ドレズナー(タフツ大学)、ジョシュア・ノーブ(イエール大学)、ライアン・ハス(ブルッキングス)、マイケル・ハーソン(22V Research)、マーガレット・ピアソン(メリーランド大学)、マルチン・ピョンツコフスキ(世界銀行)、テイラー・ファーベル(MIT)、ニタ・ファラファニ(デューク大学)、エドワード・フィッシュマン(アトランティック・カウンシル)、トーマス・フェド(ジョージメイソン大学)、ダニエル・プライス(ロック・クリーク)、ジュード・ブランシェット(CSIS)、マーク・プロトキン(COVINGTON)、ガリーナ・ヘイル(UCサンタクルーズ)、マイケル・ベックリー(タフツ大学)、アンディ・ボーコル(財務省)、アダム・ポーゼン(PIIE)、ア 45 ファイナンス 2025 Jan.
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