□□□SPOT2200--22993300--33994400--44995500--55996600--66997700--880000%%1100%%2200%%3300%%4400%%5500%%6600%%7700%%8800%%9900%%110000%%哲学者たちの指摘する通り、我々人間が未来への関心を持っているとすると、次に問題になることは、その関心を社会の側でどう制度化するかということである。人類の存続の危機は半無政府状態からもたらされており、その解決にはガバナンスを確立する必要がある。ステファン・ガーディナー(Stephen Gardiner、ワシントン大学)、様々なリスクから後続世代を保護するためのグローバルな制憲会議を開催することを提案する(Gardiner, 2014)。ガーディナーは、現状を現在が将来に対して暴君のように振る舞っている状況とみて、制憲会議を開き、現在の行いを抑制する必要があるとする。いわば合衆国憲法の制定に至るフィラデルフィアの制憲会議に相当する会議を招集するのである。制憲会議の主なスペックとして、ガーディナーが第一に挙げるのは包括性である。すなわち、会議は地球規模の長期的含意のある広範な問題を検討する。問題に基礎的なレベルで焦点を当て、制度改革を勧告する。第二は常設機関とすることである。第三は、異なる時代に生き、異なる出生コホートのメンバーである(3)新しいガバナンス(出典)Hiromitsu(2024)ングの平均値図2.18(a)は、0(非常に不適切なものである/まったくそれに基づいて行動したいとは思わない)から6(非常に適切なものである/非常にそれに基づいて行動したいと思う)の7段階で回答者が評価した各原理のスコアの平均値である(中央値は3)。平等主義や功利主義という古典的道徳原理が低迷するなか、危害原則と世界の存続が高い評価を得ている。図2.18(b)は、世界の存続を適切と感ずるか、そのスコアリングを年齢別に整理したものである。年齢の高い者ほど、世界の存続を適切だと考える者が多いことがわかる。同様のサーベイは、日本あると言わせず、客観的な証拠で裏付けることができないものか。ノーブとの意見交換を経て、筆者は多数の人々に□いてみることにしてはどうかと考えるようになった。筆者は、日本人の代表的サンプル(n=415)へのサーベイにより、将来世代に配慮する八つの道徳原理(moral principles)に関し、人々が適切とみなす程度、その原理に従って行動する意欲の程度を計測した(Hiromitsu, 2024)。検証対象とした道徳原理は、1)平等主義(各世代を平等に処遇すべきである)、2)功利主義(世代を通じた効用を最大化すべきである)、3)共同体主義(我々と将来世代は同じ共同体の一員である)、4)利他主義(将来世代を愛すべきである)、5)危害原則(将来世代を傷つけてはならない)、6)十分主義(将来世代が最低限満足できる程度の幸福は享受できるようにすべきである)、7)間接互恵性(先行世代から継承した活動を発展させ、将来世代に引き継ぐべきである)、8)世界の存続(自らが原因となって、人類や文明が途絶えることがあってはならない)の八つである。マイヤーによる、敷居値以下の状態にあることを危害を与えたとみなすとの議論は五番目の危害原則、シェフラーの注目した人類の存続は八つ目の世界の存続に相当する。以外でも実施することができるはずであり、現在、そのプロジェクトが進んでいる。図2.18:どの道徳原理を、誰が評価しているか(a) 適切性(左)、行動の意欲(右)についてのスコアリ(出典)Hiromitsu(2024)(出典)□□□□□□□□□(□□□□)□□(b) 「世界の存続」の適切性についての評価の状況(年齢層別) □□□「世界の存続」の適切性についての評価の状況(年齢層別)□□□□□□□□(n=415) 43 ファイナンス 2025 Jan.非非常常にに不不適適切切不不適適切切やややや不不適適切切どどちちららととももいいええなないいやややや適適切切適適切切非非常常にに適適切切コラム2.8:実験による哲学的命題の検証経済学の命題を実験により検証することを「実験経済学」という。ジョシュア・ノーブ(Joshua Knobe、イエール大学)らは、哲学の命題を実験で検証することを「実験哲学」と呼んでいる(Knobe & Nichols,2008)。将来世代への危害や人類の存続が重大な関心事であることを、マイヤーやシェフラー個人の単なる哲学的直観で
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