□□□□SPOT ファイナンス 2025 Jan. 32軽減しつつも、アメリカは中国を含む世界からの投資の恩恵を享受しつづけている。カネに関する措置で最も新しい展開が、対外投資への規制導入である。2025年1月から、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく大統領令により、AI、半導体、量子技術に関する中国等への投資の規制がはじまる。規制の管理は財務省のOffice of Investment Securityで行われる。規制分野において中国等と取引する場合、財務省への届け出が義務付けられ、安全保障に特に深刻な脅威をもたらす場合には取引が禁止される。対外投資規制は、投資を期に機微な技術が流出するとの懸念に基づくもので、公開市場で売買される証券への投資など規制の例外を定めている。規制は対象を三つの先端分野に絞っており、サリバンの「スモールヤード、ハイフェンス」の精神に沿ったものといえるだろう。規制手法として本措置に特徴的なことは、ELやSDNのように不適格な投資先をリスト化する手法を取らず、AI等の分野(セクター)を示す手法を採用したことである。対外投資規制については行政の裏で連邦議会での検討も進められている。現在(2024年12月)までに成案を得ていないものの、議会ではリスト方式の導入を主張する議員もいた(パトリック・マッケンリー下院金融サービス委員長、2025年1月で退任)。リスト方式では、忌避すべき投資先が明確になり、民間企業の負担軽減になる。他方、アメリカ政府に規制対象の中国の業界事情についての情報が不足する場合、実効的な規制にはならない*19。セクター方式ならば、届け出を通じ、政府は中国側の事情への理解を深めることもできる。議会にはより厳しい規制を求める声もあり、極超音速技術とスーパーコンピュータなどより広範な分野に規制の網をかぶせるべきとの主張がある(マイケル・マコール下院外交委員長)。また、規制対象となる投資形態を拡大し、公開市場で売買される証券への投資なども規制すべきとの指摘もあった(マイク・ギャラハー)。これらの厳しい提案は、米中対立を不可避とみてデカップリングを進める立場からすると、自然な道行ではある。2025年からはじまる議会では、共和党が上下院の過半を押さえている。共和党は対外投資規制を強化する方向へのバイアスを持っていると思われるが、ビジネス(全米商工会議所)やウオール街は規制を快く思っていない。規制の運用状況を横目に、規制の今後の発展の方向性から目を離せない状況がつづく。(3)ロシア制裁2022年2月のロシアのウクライナ侵攻に対し、アメリカとそのパートナーは経済・金融制裁を科した。北朝鮮やイランに比べて、ロシアへの制裁は必ずしも厳しいものではないが、ロシアのような比較的大きな経済への踏み込んだ制裁は近年例がない。図2.12は、ロシアの主な経済指標の動きをみたもアメリカにみる社会科学の実践(第四回)*19) アメリカ政府勤務経験者で、この分野で一定の声望のある有識者のひとりが、私的な懇談の場で筆者に対し、アメリカのインテリジェンスコミュニティの情報力をもってすれば、懸念すべき中国企業の特定は可能であると主張していた。他方、別の政府勤勤務経験者は、中国企業の特定は可能としつつ、コミュニティはアメリカ人の行動について情報収集することを禁じられており、この点にデータのギャップがあると主張していた。外国人である筆者には、これらの主張の妥当性は評価しにくい。図図□□□□□□□□□□□□□□□□図2.11:CFIUSへの中国と日本からの届け出件数の推移66005500440033002200110000注)届け出とは、事前通知(notice)とdeclarationを合計したもの。重要技術は届け出の内数である。注)届け出とは、事前通知(□□□□□□)と□□□□□□□□□□□を合計したもの。重要技術は届け出の内数である。□(出典)CFIUS年次報告書(2017-24)に基づき、筆者作成。(出典)□□□□□年次報告書(□□□□□□□)に基づき、筆者作成。□220011552200116622001177220011882200119922002200220022112200222222002233中中国国//届届けけ出出((中中国国//ddeeccllaarraattiioonn))((中中国国//重重要要技技術術))日日本本//届届けけ出出((日日本本//ddeeccllaarraattiioonn))((日日本本//重重要要技技術術))
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