SPOT3)意図せぬ経済的・政治的・人道的影響を避けるた(OTCA:Omnibus Trade and Competitiveness Act of 1988)に基づいて規制されている*15。財務長官を議(notification)が義務付けられている。CRS(2024b)とリンクさせること、2)多国間協調を実現すること、め、制裁を調整すること、4)制裁に関するコミュニケーション、アウトリーチを改善すること、5)デジタル資産についての知見を深めることなど近代化に取り組むことを勧告している。このレビューの翌年、ロシアへの金融制裁が実施されており、次節ではその実際についてレビューとも突き合わせて検討する。アメリカへの対内投資は、包括貿易・競争力法長とし、九つの機関の参画するCFIUSが投資の審査を行う。重要な技術・インフラ・個人情報に関わるビジネスや、一定の不動産取引に関しては、届け出によると、通常の審査を求める事前通知(notice)の件数は、2018年の229件から、2023年には233件で推移している。CFIUSは、2018年以降、簡便な届け出となるdeclarationという仕組みを設けており、その利用は増加傾向にある(2018年の20件から2023年には109件)。DeclarationとしてCFIUSに入った案件であっても、必要に応じて正式な審査に移行することもある。CFIUSは届け出を怠った疑わしい案件を見つけ出すことに人的資源を割いている。ライバル企業からの内報を受け付け、届け出のない案件には時効を設けないことで、適切な届け出がなされる環境整備に努めている。CFIUSの勧告に基づいて、大統領は投資をブロックすることができる。ただし、困難な案件であっても、企業は政府の懸念を緩和する措置(mitigation)を約束することで*16、CFIUSからの承認を引き出す道がある。また、決定に至る前に申請を取り下げることも可能である。2024年までにブロックにまで至った案件は8件と限定的である*17。いったん決定が下ると,司法プロセスでも、サブスタンスについてはアピールができず、決定は最終的なものとなる*18。対内投資規制は、中国からの投資にどのような影響を及ぼしているのか。図2.11は、CFIUSの年次報告(CFIUS, 2017-2024)に基づき、中国と(比較相手として)日本の届け出件数の推移を示したものである。FIRRMAの成立した2018年以降、中国からの案件が抑制されていることが読み取れる。Declarationの利用は、日本と比べて中国では限定的である。また、重要な技術に関わる投資案件も日本と比べて抑制されている。ブロックに至った案件には、先端技術を持つ企業への中国企業などによる投資案件が含まれる。2017年には、Lattice Semi-conductor社に対するCanyon Bride Capital Partnerという中国系米国法人による買収がブロックされている。2018年には、Broadcom社(シンガポール)によるQualcomm社の買収がブロックされている。2024年までにブロックされた事案では、中国との直接/間接の関わりが取りざたされていた。ブロックの数は限定的であるが、これらは中国企業による投資への一定の萎縮効果を生んだ。FIRRMAの立法過程の議論では、投資促進と安全保障のトレードオフが論点のひとつであった。2023年年次報告(CFIUS, 2024)によると、2023年に提出された233件の通知のうち、57件(24%)が取り下げられた。このうち43件は2023年か2024年に再提出されているが、9件はCFIUSが有効な緩和措置がない旨を通知企業に伝えたか、CFIUSが通知企業にとっては受け入れがたい緩和策を提案したために最終的に断念に至ったものである。取り下げられた案件のうち5件は、商業的な理由で企業側が自主的に断念したものである。24%という数字は決して低くはないが、3.9%(9/233)は著しく高い数字ではない。Declarationの活用など負担軽減に配慮を払っている甲斐もあってか、(第三回の図2.4の示唆する通り)アメリカへの投資は活況を呈している。中国からの投資も、重要な技術に関わる事案では萎縮効果がみられるものの、中国から投資は2023年の通知件数で一位(33件)を維持している。(第三回の)図2.4でみた通り、金額でみても中国の対米投資は(減少傾向のなかでも)底堅さをみせている。安全保障上のリスクを*15) 対内投資審査を導入する契機になったのは、当時の日本からの対米投資攻勢であった。*16) 承認に至った措置は会計事務所がモニタリングし、その執行状況をCFIUSに報告、確認を受けるのが通例である。*17) バイデンは、2025年1月3日、日本製鉄によるUSスチールの買収をブロックした。本稿では、足許で動いている本件について論評する用意はない。*18) ただし、デュープロセスについて争うことは可能である。実際、2012年にブロックされた、中国系のRalls Corporationによるワシントン州の風車の買収(買収後、米軍から訓練を妨げるとの苦情の申し立てがあった)について,Ralls社はなぜブロックされたのか理由の説明がないとして争い,Ralls社が勝訴した(2014年7月15日、コロンビア特区連邦上訴合議法廷)。この件以来,CIFUSは決定の理由を説明するようになった。 31 ファイナンス 2025 Jan.
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