ファイナンス 2025年1月号 No.710
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5.結び:これからの海外IR(3)CT国債、の3つに分けられますが、やはりここ最山内 時点を現在に戻して、ここ最近の個別面談や各種講演におけるQ&Aセッションなどを踏まえ、足元の海外投資家の注目点について確認しましょう。平野 大まかに、(1)日本経済・財政、(2)日本国債、近で投資家からの質問が多いのは(1)でしょうか。特に、今後のデフレ脱却の確実性を見定めるポイントとして、賃上げの背景や持続可能性、その広がりなどについて注目する投資家が増えていると感じます。(2)については、日銀による国債の買入れ減額を受けた今後の国債の安定消化策に関する質問のほか、先ほど話題にあがった、海外投資家による短期債の保有比率の高さの理由についてもよく聞かれるところです。飯田 私が直近(2024年10月)で行ったアジア出張でも、以上の内容は多くの投資家から聞かれました。その他、今後の国債発行計画、特に平均償還年限の方向性などについての関心が高い印象でしたね。山田 (3)については、投資主体、および国・地域によっても関心・理解度が異なり、CT国債の発行目的から資金使途に関わる詳細の話まで、質問は非常に多岐にわたります。「トランジション・ファイナンス」のコンセプトや取組は、これまで世界の投資家にとって馴染みの薄いものでしたが、2024年2月の初回から複数回の発行も経て、今や現実的なアプローチとして理解を得られていることを、IRを通じて実感しています。脱炭素が難しい分野におけるトランジションの推進を含む気候変動対策を進めなければ、現実にカーボンニュートラルは進まないという認識が、欧州を中心に浸透してきたことが大きいのではないでしょうか。山内 ある投資家からは、“tuna auction”(マグロの競り)が3 million USDに達し驚いた・円安のうちに寿司をたらふく食べに行きたい、との強い思いを拝聴しました。国債入札以外の“auction”の話に強い関心があり驚きましたが、様々な観点から日本に興味を持っていただけていることは嬉しいですね。4.足元の海外投資家の関心事項 19 ファイナンス 2025 Jan.官民連携による国債保有者層の多様化に向けた取組JGB・GXプロモーターと日本国債IR特集山内 最後に、今後のIR活動について展望しましょう。個別面談で海外投資家から債務管理政策などに関するフィードバックを頂く中で、どのような課題を感じていますか?平野 国債保有主体が日銀に偏っており、他国対比でも家計や海外に伸び代があることを指摘する投資家は多い印象です。多額の国債残高を抱える日本において、市場が変化した場合に取引が一方向に流れることを防ぎ、市場を安定化させる観点などからも、多様な投資家が様々なニーズに基づいて国債を保有することは重要と考えています。山田 私は、「債務管理リポート」の発行にも携わっていますが、個別面談時に配布・紹介するようにしています。投資家からは、他国では類を見ないほど債務管理政策について詳述されており豊富な情報量であるとの好意的な声をいただいているため、認知度向上や、更なる内容の充実化に一層注力していきたいと思います。飯田 今後の方向性としては、JGB・GXプロモーター各社との協力を含め、官民連携して効果的・効率的なIRを模索していくことになります。オンラインのメリットを活かしたセミナー形式のIRなどもそのひとつです。山内 日本への関心が高まっている絶好のタイミングであることも踏まえ、これまで訪問してこなかった国・地域での新規投資家の開拓にも注力していきたいですね。引き続き内容・手法の両面から、より実効的なIRを目指していきましょう!

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