(※)令和6年12月時点平野 金利水準にかかわらない投資ニーズもあるということですよね。年々、海外投資家による国債保有が増加基調(図表3)にありますが、海外投資家の投資スタンスについて、目立った特徴はなんでしょうか。飯田 国庫短期証券(T-Bill)の保有割合の高さは特徴的と言われますね(図表4)。この背景としては、本邦投資家によるドル調達需要の強さなどから、海外投資家が通貨ベーシス・スワップを活用することでプレミアムを享受できる環境が続いていることが挙げられます。より金利リスクを抑えて収益が期待できる短期債に投資妙味があると考える投資家も多く、こうした取引はマイナス金利下でも行われていましたが、未だに大きな存在感があります。山田 そのほか、投資主体にもよるため一概には論じられませんが、流通市場(セカンダリー市場)での活(1)運用スタイル(1)運用スタイル✓ パッシブ運用:ベンチマークとなるインデックスに✓ パッシブ運用:ベンチマークとなるインデックスにおける日本国債のポジションに追随おける日本国債のポジションに追随✓ アクティブ運用:ベンチマーク対比で特定年限を✓ アクティブ運用:ベンチマーク対比で特定年限をオーバー/アンダーウェイトする等、様々な戦略でオーバー/アンダーウェイトする等、様々な戦略で超過収益を獲得超過収益を獲得(2)外貨準備運用(2)外貨準備運用✓ 中央銀行・金融当局が保有する外貨準備の運用先と✓ 中央銀行・金融当局が保有する外貨準備の運用先として日本国債を選好して日本国債を選好(3)ALM(Asset Liability Management)対応(3)ALM(Asset Liability Management)対応✓ 資産と負債を総合管理し金利リスクを最小化 ✓ 資産と負債を総合管理し金利リスクを最小化 (銀行は預金・生保は保険準備金が負債であり、主(銀行は預金・生保は保険準備金が負債であり、主にそれらと同等の年限の国債を資産として保有)にそれらと同等の年限の国債を資産として保有)(4)各種規制対応(4)各種規制対応✓ バーゼル規制(銀行)、経済価値ベースのソルベン✓ バーゼル規制(銀行)、経済価値ベースのソルベンシー規制(生保)等への対応シー規制(生保)等への対応(5)担保目的(5)担保目的✓ 日銀共通担保、デリバティブ取引における証拠金等✓ 日銀共通担保、デリバティブ取引における証拠金等山内洋輔 ……………………理財局国債企画課国債政策情報室海外投資家係長平野星来 ……………………………………………………………海外投資家係員飯田真也 …………………………………………………………………専門調査員山田知宏 …………………………………………………………………専門調査員財務省では、2005年に日本国債の海外IRを継続的な取組として開始して以降、2024年12月末までに、累計43の国・地域、延べ364の都市を訪問してきた(図表1)。ここでは、海外IRを担当する理財局国債企画課国債政策情報室海外投資家係の担当者による本音トークを通じて、海外投資家の特徴や近年の動向、担当者の想い等、海外IRのリアルを紹介する。山内 日銀による金融政策の枠組みの見直しなどを受けて、海外投資家を含む様々な投資家に対するアプローチの重要性が一層高まっている認識です。海外投資家係としては身が引き締まる思いですが、まずは、海外投資家が日本国債へ投資する理由をおさらいしましょう。飯田 様々な投資家が、多様なニーズのもと投資をしています。主だったものを図表2にまとめていますが、同じ投資家でも、マーケット環境や規制の動向によって年限・金額のニーズは常に変化するものという認識です。1.海外投資家の動向欧州(140回)イギリス(36回)フランス(21回)オランダ(19回)ドイツ(17回)デンマーク(7回)スイス(7回)スウェーデン(5回)ルクセンブルク(4回)イタリア(4回)ベルギー(4回)ノルウェー(3回)フィンランド(3回)スペイン(2回)オーストリア(2回)ジョージア(2回)ロシア(1回)ハンガリー(1回)ポルトガル(1回)カザフスタン(1回)アジア(84回)中国(香港含む、24回)シンガポール(23回)タイ(8回)韓国(7回)フィリピン(5回)マレーシア(5回)インドネシア(4回)台湾(3回)ブルネイ(2回)インド(2回)ベトナム(1回)中東(39回)アラブ首長国連邦(16回)サウジアラビア(8回)クウェート(7回)カタール(6回)トルコ(2回)北米(80回)米国(70回)カナダ(10回)オセアニア(20回)オーストラリア(16回)ニュージーランド(4回)中南米(9回)ブラジル(4回)チリ(2回)メキシコ(2回)ペルー(1回)令和4年度実績面談数130件都市数7都市令和5年度実績令和6年度実績(※)185件135件16都市22都市 15 ファイナンス 2025 Jan.図表1 海外IR実績図表2 日本国債への主な投資理由担当者対談:海外IRチーム〜世界の投資家から日本を見る〜
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