ファイナンス 2025年1月号 No.710
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ファイナンス 2025 Jan. 12SMBC日興証券・後藤 金融政策の正常化が進む中で、日本国債について、日銀から他の投資家へポジション移行がスムーズに進行するかが大きな課題となっています。同様に、現在、債券先物の受渡適格銘柄の品薄感や流動性確保の観点からも課題が生じていると認識しております。投資家にとって金利上昇は運用利回りの改善が期待できる一方で、保有している債券には評価損が発生してしまいますので、日本国債のポジションマネジメントは難題であると思います。また、金融機関のビジネスにおいて、預金金利の上昇は、調達コストの上昇にもつながります。貸出金利引き上げは交渉が難航する可能性もありますので、市場金利の上昇を十分に貸出金利に転嫁できるとは限らないと考えています。したがって、金融機関にとっては、収益の改善に向けた有価証券の運用強化が急務になっていると考えられます。ただし、17年ぶりの利上げなので、本格的な国内の金利上昇局面を経験したことのある投資家は、我々証券会社も含めて限られているため、手探りで対応を進めている状況です。東海東京証券・馬場 過去10年を見ていますと、利回りを稼げない日本国債から検討幅を広げて、公共債や事業債といった債券を購入する投資家も増えてきておりました。そのため、国債金利も上昇すれば、再び日本国債の投資も回帰すると思われます。なかでもJA(農協)などの業態は潜在的に需要が大きいのではないかと捉えており、当社としては、地元に根差している投資家を中心に認知度を高めていきたいと考えています。また、国債を選好する投資家は、流動性を重視する側面が非常に強いので、徐々に流動性が改善するなかで、大きく減少させた日本国債の保有残高を戻す動きも少しずつ見られています。矢野 海外投資家についてはいかがでしょうか。大和証券・中山 海外投資家はこれまで、日銀のマイナス金利政策により円金利が低位で推移している期間がとても長かったことを背景に、日本国債への積極投資は限られていました。しかし、金融政策の正常化に伴う金利水準の上昇を受けて、徐々に運用を再開して官民連携による国債保有者層の多様化に向けた取組JGB・GXプロモーターと日本国債IRきている状況で、これまでアンダーウェイトとしていた円債ポジションを復元するような動きも今後さらに期待できます。日本国債のイールドカーブがスティープ化していく状況になり、超長期債に関心が高まってきていると見ています。さらに、金融政策の変更の思惑から、海外のヘッジファンドの動きが足元で活発化しており、日本のマクロ指標に市場が反応する動きが見られるように、トレードは増加している状況にあります。田中 みずほ証券におかれましては、直近、中東IRをアレンジいただきましたが、海外投資家の投資動向について、肌感覚で何か感じたことがありましたら、ご教示ください。みずほ証券・渡邊 私自身、海外投資家のビジネスに携わるようになってから10年以上経ちますが、当初は欧米のアセットマネジメントのような業態でも、FXスワップやベーシス・スワップを通じた円調達取引には馴染みのない投資家がまだ見られました。しかし、10年前ごろからFXスワップやベーシス・スワップの利用が進み、短期国債市場の海外投資家によるマーケットシェアは約60%まで拡大しました。そうした中、先日、財務省と中東各国のリアルマネーを中心とする主要投資家を回ったわけですが、多くの国で通貨がドルにペッグされていますので、ドル円ベーシス勘案後で投資妙味があることを紹介したところ、意外と知らない方がいて、検討してみたいとのことでした。広く世界を見渡すと、こうした投資機会にまだ気づいていない投資家がいると思いますので、日本国債市場における海外投資家の拡大は、今後も見込まれるのではないかと考えています。矢野 ありがとうございます。各投資家に対して重点的に説明すべきポイントについても、ニーズに応じて、柔軟に調整していきたいですので、ご相談させてください。次に、JGB・GXプロモーターとして今後力を入れていきたい取組や地域などについて、ご教示ください。特集

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