ファイナンス 2024年12月号 No.709
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連載PRI Open Campus 2.執筆者と各論文のエッセンス示され、経済政策・経済体制改革の方向性を分析しました。第3回(2019年8月)は、習近平政権2期目に入り、2035年までに社会主義現代化を完成させるとともに、21世紀中葉までに強国化を実現するという壮大な中長期戦略を明らかにしました。こうした中で、習近平政権第2期の内外政策について、従来の分析に加えて、習近平総書記の経済政策の基本理念、米中経済摩擦・日中関係の論考を加えるなど幅広く検討を行いました。そして、今回(2024年11月)は、中国が改革開放を推進して以来、最大の困難に直面する中で、引き続き財政、金融、政治、外交を含めた広範なトピックについて、各分野の専門家が分析・考察を行っています。中国は、2020年と2022年の2回にわたり、新型コロナウィルス感染症の流行に見舞われ、2035年までに掲げた目標達成に暗雲が立ち込めています。このように現在中国が改革開放以来最大の内憂外患を抱える中で、3期目の習近平政権がどのような政策を実行し、2035年さらには今世紀中葉までに何を目指そうとしているのかを論じます。米中摩擦は、当初は米国の対中貿易赤字を巡る高関税賦課の争いであったものが、イデオロギー、安全保障面での対立へとスケールアップしています。また、対EUでも貿易摩擦が厳しくなっています。足下では、中国経済が抱える不動産、地方政府債務、中小金融機関の経営不安の三大リスクに加えて資本市場のリスクが大きくなってきています。これらのリスクの多くは、1回目の特集号刊行時(2009年8月)に指摘されていましたが、中国側は隠れていたリスクを十分に認識してこなかった可能性があり、それが今になって顕在化し始めつつあるのではと思います。本特集号では、こうしたリスクに焦点を当てながら、短期的な見通しだけでなく、2035年の目標の達成の見込みやその先の展望について、本年7月に行われた三中全会の決定の意味合いにも触れながら、紐解いていきます。また、本特集号は、1993年から継続して行われている中国研究会の報告書としても位置づけられます。本特集号は、令和5年度の中国研究会における各委員およびゲストスピーカーが、その報告内容をベースに、その後の中国経済の動向(2024年7月の三中全会等)を踏まえ加筆し、論文化したものです。田畠:執筆者の多くは財務総研の主催する中国研究会の委員の先生方ですが、どのような方々なのか簡単にご紹介頂けますでしょうか。また、本特集号は、(1)経済・財政・金融、(2)政治・外交、(3)産業政策の三つに分けて執筆されていますが、各論文のエッセンス(見所・着眼点)や各々の位置づけを教えていただけますでしょうか。田中:1993年に発足した中国研究会は、発足当初は実務家を中心に構成されましたが、現在は、大学教授だけでなく民間シンクタンクの研究者も含め、中国の政治・経済等の分野の第一人者に委員を務めていただいています。國分座長(前防衛大学校長・慶應義塾大学名誉教授)には、本研究会発足以来の唯一のメンバーとして、現在は座長としていつも精力的に議論をリードしていただいています。國分座長には、中国の政治外交の第一人者として巻頭言の論考を執筆いただき、中国政治が社会主義市場経済から30年を経て一定の限界に突き当たったと論じられています。本特集号で取り扱う3つのテーマに分けて、以下のとおり、執筆者と各論文のエッセンスを簡単に紹介させていただきます。小職(田中特別研究官)は、2024年7月の三中全会で示された経済体制改革の内容を分析しています。また、財務省において関心の深い財政問題について、まず中国財政研究の第一人者である内藤委員(大東文化大学経済学部教授・前学長)に財政リスク、特に地方政府債務問題を論じていただきました。そして、齋藤委員(大和総研経済調査部長)には、中国経済の最大の問題である不動産不況と金融リスクPRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 38(1)経済・財政・金融ファイナンス 2024 Dec. 89

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