左左右右連載海外経済の 潮流 □単位:%□□単位:%□□単位:%□円安により輸入コストが増大(輸入材価格や輸送費の上昇など)品質重視リードタイムの短縮地政学的リスクが増大人件費の上昇で、海外での生産コストが上昇国内のサプライチェーンの強化(注1)母数は、国内回帰や国産品への変更など「対策を実施/検討している」企業1,403社(出典)帝国データバンク2023年1月27日「国内回帰・国産回帰に関する企業の動向調査4社に1社が「国内」「国産」へ回帰サプライチェーン混乱による調達難が最大の理由~日本国内の「生産能力」や「コスト競争力」が課題~」海外からの調達または輸入品の方が安い品質重視生産・調達コストが増える(人件費・輸送費など)リードタイムの短縮につながらない円安により輸入コストが増大(輸入材価格や輸送費の上昇など)品質重視リードタイムの短縮地政学的リスクが増大海外からの調達または輸入品の方が安い品質重視(注2)母数は、国内回帰や国産品への変更など「対策を実施/検討していない」企業2,104社人件費の上昇で、海外での生産コストが上昇国内のサプライチェーンの強化生産・調達コストが増える(人件費・輸送費など)リードタイムの短縮につながらない撤退や廃止、移転コストがかかる撤退リスクを避ける(取引先喪失や技術流出など)国内回帰や国産品への変更などの対策を実施□検討した理由(複数回答)国内回帰や国産品への変更などの対策を実施□検討していない理由(複数回答)*2) (出典)帝国データバンク2023年11月17日「TDBトレンドウォッチ 海外進出と国内回帰・国産回帰の動き」国内回帰や国産品への変更などの対策を実施□検討していない理由(複数回答)2.円安の影響を受けた国内回帰の見通し【図表3】国内回帰、国産品に関するアンケート調査安定的な調達□□□□□□□□□□安定的な調達□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□安定的な調達安定的な調達同様に、業種別に動きを確認する(図表2)。輸送機械は、製造業全体と同様に、(2)および(3)の期間は、国内回帰の動きが観察できる。また、はん用・生産用・業務用機械においては、2023年に入り(2)のとおり海外投資が最高水準に達する中で国内投資重視の動きも見られる。一方で、化学と電気機械については、足元は(2)のとおり海外投資重視の動きが見られる。化学の足元の動きについては、円安の影響を受けやすいエネルギーコスト構造等が影響している可能性があると考えられる(詳細は後述)。続いて、上述の企業の国内・海外設備投資の傾向を踏まえ、円安の影響による企業の国内回帰の見通しについて調査した。近年、大手企業を中心に国内回帰、国内生産力強化の動きが広がっているところ*2、帝国データバンクの「国内回帰・国産回帰に関する企業の動向調査」によると、海外調達または輸入品を利用している企業のうち40%が国内回帰や国産品への変更などの対策を実施、検討している。その理由としては、約半数の企業が「安定的な調達」「円安により輸入コストが増大」を挙げている(図表3)。逆に対策を実施していない企業の理由としては、「安定的な調達の継続」「海外からの調達または輸入品の方が安い」といった理由が高い割合であることから、国内回帰の検討においては、調達に係る安定性とコストが重視されていると考えられる。次に、2015年の産業連関表を基に2015年平均のドル円レート121円から2023年平均のドル円レート141円に変化した場合の国内産業への価格効果を試算した(図表4上図)。図表4上図の上向きの棒が円安による輸出価格上昇を受けた付加価値額の上昇、つまり円安によるプラス効果を示しており、下向きの棒が円安による輸入品価格の上昇を受けた投入・産出構造を通じた国産品価格の上昇、いわゆる円安によるマイナス効果を示している。この試算は、部門ごとの国内総需要に占める輸入品の割合を輸入係数とし(図表4下図)、価格が変化しても輸入係数が維持される、と仮定している。更に、輸入品価格の変化が各産業の付加価値率には影響を及ぼさず、投入品価格の変化分は生産価格に完全転嫁する、と仮定している。試算の結果として、近年国内回帰の動きが見られた国内回帰や国産品への変更などの対策をはん用・生産用・業務用機械や輸送機械を中心に、円実施□検討した理由(複数回答)安によるプラス効果が円安によるマイナス効果を上回□□□□□る結果となった。(ただし、前述のとおり、完全な価格転嫁等が前提となっている点には留意が必要である。)コラム 海外経済の潮流 153□□□□□□□□□(1)円安による産業別の価格効果に関する試算ファイナンス 2024 Dec. 73
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