SPOTアジア太平洋における財政枠組みの強化強化が不可欠である。具体的には、各国が直面するリスク及び中長期的な課題を財政計画に織り込み、その程度に応じてより野心的な中期計画、財政ルールを策定することで、経済が好調な時期における財政バッファーの構築を促す必要がある。あわせて、免責条項を適切に設計し、大規模な危機時には財政ルールを停止しつつ、危機が収束した後に財政ルールに復帰するための道筋を整えておく必要がある。こうした取組は、将来の目標を達成するために、現在どのような措置が必要であるかの議論を深めることに役立つと期待される。また、債務リスクが高まっている国にとっては、信頼性ある財政計画の策定を通じて、債務危機を避けることに資する。他の地域では、独立財政機関が独立したマクロ経済予測や財政措置の見積もりを行うことで、中期財政計画の信頼性・透明性向上に努めている国もあり、こうした取組も参考にすべきである。世界中で多くの国が、経済成長の鈍化、自然災害をはじめとするリスクの増大、財政状況の悪化、政治状況の流動化といった課題に直面している。そしてその中で、持続的な成長を実現し、将来世代に希望ある社会を残していくため、財政枠組みをどう強化するか、試行錯誤を繰り返している。日本においても、同様の視点に立って、毎年度の予算編成にとどまらず、財政をめぐる枠組みそのものに関する建設的・客観的な議論が深まっていくことを期待したい。 66 ファイナンス 2024 Dec.
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