0-1-2-3-4-5-6-7-8-9-100-2-4-6-8-10-12-14-16-1860SPOT アジア太平洋における財政枠組みの強化(出所)Flores, Gupta, and others (2024).1812(出所)Flores, Gupta, and others (2024).(注)四角は第1四分位数から第3四分位数までの四分位範囲、枠内の線は中央値、マーカーは平均値を示す。対象期間は、パンデミック前が2004~19年、パンデミック後が2020~22年である。目標なし拘束力のない目標拘束力のある目標歳出財政収支債務ファイナンス 2024 Dec. 652. パンデミック前:財政収支ルールからの乖離(対GDP比)アジア太平洋その他世界4. パンデミック後:財政収支ルールからの乖離(対GDP比)アジア太平洋その他世界【図表9】パンデミック前後での財政ルールからの乖離1. パンデミック前:債務ルールからの乖離(対GDP比)アジア太平洋その他世界10090807060504030201003. パンデミック後:債務ルールからの乖離(対GDP比)アジア太平洋その他世界1009080706050403020100*4) 同計画では、「同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」ことも掲げられている。【図表10】毎年の予算編成における中期財政枠組みの役割(アジア太平洋)(国数)債務ルール及び財政収支ルールについて各国の順守状況を見ると、パンデミック以前は、アジア太平洋諸国は、他の地域よりもルールからの乖離が少なかったことが見て取れる(図表9)。しかし、パンデミックによる経済の収縮に対応するため、アジア太平洋の多くの国も、他地域の国々と同様、財政ルールから離脱、又はルールを停止した。パンデミックの後では、債務ルール、財政収支ルールとも、アジア太平洋諸国の乖離は他地域の乖離よりも大きくなっている。中期財政枠組みについて見ると、アジア太平洋では22か国がこの枠組みを採用している(2023年)。これらの枠組みの多くは債務や財政収支に関する中期的な目標を設けているものの、その大半は拘束力を持たない目安に留まり、毎年の予算との結びつきは弱い(図表10)。また、中期財政枠組みのパフォーマンスについて、事後的な分析を行う国は6か国のみである。中期財政枠組みの効果の定量的な測定は困難であるが、同枠組みの下でも楽観的な中期見通しを継続的に行う国があるなど、同枠組みの採用が、財政の予測可能性の向上に直ちに寄与するとは言い難い。他方で、中期財政枠組みの採用を含む財政改革が国債格付けの引上げにつながった国(インド)や、財政運営改革を通じて予算の信頼性を高めた国(モルディブ)の存在は、中期財政枠組みの重要性を示唆している。日本は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」以降、2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支黒字化を目指すとの財政健全化目標*4を掲げており、合わせて、年2回公表される「中長期の経済財政に関する試算」の中で、10年間程度の経済財政の見通しを示している。本ペーパーでは、このことをもって、日本は中期財政枠組みを有していると解している。ただし多くの国と同様、この財政健全化目標は、毎年度の予算編成を直接縛っているわけではないし、見通しについて、事後的な検証が行われているわけでもない。これまで見てきたとおり、財政政策はアジア太平洋において、大規模なショックの影響を緩和するのに重要な役割を果たしてきた。一方で、パンデミックに際して多くの国が財政ルールから離脱し、あるいはルールを停止したことは、これらの財政枠組みは不十分であったことを示している。アジア太平洋の各国・経済は、財政をめぐる状況が悪化する中で、リスク管理を強化して将来の危機に備えつつ、開発目標を達成し、人口動態や気候変動からもたらされる歳出ニーズに対応していかなくてはならない。このためには、中長期の視点に立った財政枠組みの5.財政枠組みの強化に向けて
元のページ ../index.html#69