カンボジアバングラデシュインド中国日本オーストラリアカンボジアバングラデシュインド中国日本オーストラリア10020SPOT アジア太平洋における財政枠組みの強化0.60.50.40.30.20.1-0.1-0.2先進国1.41.20.80.60.40.2-0.2-2-4-6-8-10-12-14太平洋島嶼国世界金融危機(2008-09年)先進国(出所)Flores, Gupta, and others (2024).(注) と水は、世界金融危機(2008年と2009年)またはパンデミック(2020年)を含む5年間のウインドウに基づく反景気循環性係数を示す。アジア太平洋(出所)Flores, Gupta, and others (2024).(注)グラフ中、⬜と⬜の棒は、過去3年間の平均からの財政収支の乖離を示し、 は、過去3年間の平均からの成長率の乖離を示す。新興市場国低所得国太平洋島嶼国先進国新興市場国低所得国太平洋島嶼国その他世界アジア太平洋その他世界アジア太平洋その他世界アジア太平洋(出所)Flores, Gupta, and others (2024).(注) と の棒グラフは、それぞれ世界金融危機後のサンプルにおける裁量的措置と自動安定化措置の反景気循環性係数(成長率の1%ポイント低下(上昇)に対する財政収支の悪化(改善)の推計値)を示す。世界金融危機(2008-09年)裁量的措置自動安定化装置成長率裁量的措置自動安定化装置パンデミック(2020年)パンデミック(2020年)ファイナンス 2024 Dec. 63裁量的措置自動安定化装置新興市場国低所得国【図表4】財政の反景気循環性:世界金融危機時及びパンデミック時(対GDP比)【図表5】危機時における財政収支及び経済成長率の変化(対GDP比、%ポイント)【図表3】財政の反景気循環性(世界金融危機後)(対GDP比)成長が加速した時に財政赤字がどの程度縮小したかを分析している。図表3のとおり、財政が経済に果たしてきた役割は、各国の所得水準によって大きく異なる。日本を含む先進国においては、世界金融危機の後、経済成長率が1%ポイント低下すると、財政収支は対GDP比で約0.6%悪化することが示されており、景気動向に対する財政の感応度が危機の前よりも高まっている。この財政対応には、いわゆる自動安定化装置によるもの(景気の変化に連動した所得税や失業給付等の変化)と、裁量的な措置によるもの(景気対策等)の両方が含まれている。新興市場国の財政対応は先進国よりも限定的であり、自動安定化装置による対応に限られている。これは、新興市場国は、先進国よりも財政対応のための資金調達の手段が限られていること等によると考えられる。低所得国においては、財政対応は更に限られており、各国間のばらつきも大きい。太平洋島嶼国については、統計的に有意な財政対応は検出されなかった。他地域と比較してみると、日本を含むアジア太平洋の先進国は、他地域の先進国よりも大きな財政対応を行っていることが見て取れる。図表4では、世界金融危機及びパンデミックの期間における財政対応の大きさを示している。アジア太平洋諸国、特に先進国では、財政の景気に対する感応度が、これらの危機時により強くなったことが示されている。この傾向は特にパンデミック時に顕著である。個別国で見ても、オーストラリア及び日本の2020年の財政赤字は、その前3年間の平均に比して対GDP比で6%以上拡大しており、中国やインドがこれに続いている(図表5)。これらの財政対応の多くは裁量的措置により行われており、各国の自動安定化装置が危機の規模に比して不十分であった可能性が示唆される。パンデミック時、各国政府は支援策の拙速な解除によるリスクと、支援策の解除が遅れることによるコスト(財政悪化、インフレ圧力)とのトレードオフに直面した。こうしたトレードオフは、自動安定化装置を整備したり、大規模なショックに対応するための事前戦略・ツールを備えておくことで緩和できる可能性がある。アジア太平洋におけるパンデミック対応の特徴の1つは、公的金融機関や国有企業等、財政に直接表れない予算外の措置の積極的な活用である。図表6にあるとおり、日本は政府関係金融機関等の活用により、地域の中で最大規模の予算外支援を行った。その他、韓国やインド、シンガポール等が企業等に対して予算外での支援を行った。
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