SPOT 津田尊弘課長に聞く、国際金融と経済協力図表2 財政投融資の仕組みについて性などです。経済安全保障という側面は、過去5、6年ほどでその重要性が認識され、日本だけでなく、どこの国でも重要な課題として意識されていると思います。服部:神田(2021)の7章の構成は、まずグローバルな潮流の説明から入り、JICAの話が来て、次に、JBICが続き、最後に世銀など国際機関の話になります。学生の反応を見ると、身近なのは、JICAとJBICという印象です。そこで、まずは、金融面に焦点を絞りながら、JICAとJBICから議論を進めていきたいと思います。最初に基礎的な知識を整理したいのですが、大切な点は、JICAやJBICは政策金融を担う政府系金融機関であるということです。歴史的には、財務省資金運用部が、郵貯を通じて集めてきた資金を、例えば日本政策投資銀行(DBJ)やJBICなどの政府系金融機関に貸し出していました。この仕組みが1990年代後半に批判され、財投改革がなされ、政策金融については、基本的には、「民間にできることは民間に」という方針となりました。財投改革をうけて、政府系金融機関の規模は縮小していきます。政策金融や政府系金融機関の役割については大きな話になってしまうので別の文献にその詳細は譲りますが、政策金融の基本原則は、3つの機能に集約されると理解しています。すなわち、(1)中小零細企業・個人の資金調達支援、(2)国策上重要な海外資源確保、国際競争力確保に不可欠な金融、(3)円借款(政策金融機能と援助機能を併せ持つ)、という3つです。JICAとJBICは、この(2)と(3)に関わってくるとおもいます。政策金融に係る資金の動きを理解するには、財政投融資の仕組みを理解する必要があります。図表2が現在の財政投融資の仕組みを整理したものですが、JBICやJICAが資金調達をする際、自分たちで例えば、社債(これを「財投機関債」と呼びます)を発行して資金調達をすることもできます。もっとも、この場合、国が国債を発行してファンディングすることに比べ、信用リスクや流動性プレミアムの分だけ割高になります。そこで、政策的に必要な部分に関し、財務省が国債(財投債)を発行し、それを低利でこれらの機関に融資しています。これは財務省が実施する「グループ・ファイナンス」のような機能といえます。それに付随して、JBICやJICAが借り入れをする際に、政府保証をするという形も取られています。私は財務省に勤務していた時期もあるのですが、政府での経験があると、こういう大きな資金の流れがよりくっきりと理解できるようになることがあります。民間金融機関では、近年、特に専門化が進んでおり、例えば、数十年、国債のトレーディングや、株や債券の引受など、特定の業務のみをやるということも少なくありません。これは専門性という意味ではよいと思いますし、これはこれでもちろん面白いのですが、個人的にはどうしてもマイクロな視点になりがちで、日本全体で見たマクロの視点を得にくいと感じます。一方、財務省での経験があると、僕らのお金がどう出て、民間金融機関や政府系金融機関を通じて、どのように実際のローンに結びついているか、ということがよりクリアにわかる感じがします。私の印象では、JBICとJICAは学生の中でも人気な就職先だと思います。まず、JBICとJICAから話を始めたいのですが、学生のみなさんはJICAとJBICにつJICAとJBICの役割についてファイナンス 2024 Dec. 13下下記記のの22ペペーージジ目目□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□(出所)財務省
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