ファイナンス 2024年12月号 No.709
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SPOT大臣官房財務省主計局主税局関税局理財局国際局総務課調査課国際機構課地域協力課為替市場課開発政策課開発機関課図表1 財務省の組織図と国際局(出所)財務省を書いたりもしました。2年目はロンドンにあるロンドンビジネススクールというところで、コーポレートファイナンスやキャピタルマーケッツ、アセットプライシングなど金融の基礎を勉強しました。服部:金融はそこで初めて本格的に勉強したわけですね。津田:そうですね。それが非常にいい経験になりました。さきほどIMFの金融資本市場局に採用された話をしましたが、特にそこで活きました。IMFはマクロ経済政策を専門としている機関ですし、かつ、経済学の博士号(Ph.D)を持っていることが職員のデファクトスタンダードです。その中で、博士号もなく中途採用ですから、何もしなければただのアンダードッグと思われて終わりです。バリューを出すためには、「私はこういうことができます」ということをそれこそ毎日毎時間アピールし続けないといけない。最初の半年から1年ぐらい、しゃかりきになって頑張りました。具体的なエピソードを1つご紹介します。私が出向した当時は、欧州の債務危機がありまして、ギリシャだけではなくポルトガルやスペイン、アイルランドといった国々が深刻な債務問題を抱えていました。これに関連して、当時流行っていたデリバティブ商品に、クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)というのがありました。これは簡単に言うと、支払不履行などのイベント(クレジットイベント)が起きれば、経済的補償がもらえる、保険のような商品です。いわば支払不履行が起きうる確率にベットするような商品で、それがもともとの債券の価格の変動率を高めるのではないかという危惧もあり、具体的なメカニズムに対する興味が高まってきました。ところが、細かな商品の実務は少なくともIMFの中ではあまり知られていませんでした。例えば債券のデフォルトの条件は債券契約で決まりますが、CDSに定めるクレジットイベントについては、ISDAというデリバティブ協会のルールに従って決まっていて、両者は微妙に違かったりします。こういう法的な知識は、マクロ経済だけを担当しているエコノミストだと知りようがないわけですが、私はビジネススクールで知り合った律的なバックグラウンドを活かして文書を読み込んだりして、両者の違いを説明するメモを作り、それを配布して、僕はこれもできるから今度はこういう仕事もやらせてくれという生き残りに使ったりもしました。服部:私の印象ですが、一般的には、財務省というと国際局の業務というよりは予算と税をやっているというイメージを抱きがちです。まず、財務省の中で、どのような局があり、国際局の役割について説明をいただけますか。津田:財務省全体では総合調整を行う大臣官房に加えて、局が5つあります。主計局というところが予算編成を担当していて歳出額を決めています。歳入の見積もりを作ったり、税制改正を担うところが主税局になります。それから関税局というところが、関税収入や、水際対策としての税関の政策などを担当しています。歳入と歳出というのは毎年のフローですが、一方で、資産・負債といういわばストックを管理しているのが理財局というところになります。日本国債の発行、国のキャッシュマネジメント・資金繰りなどの業務に加えて、最近はデジタル通貨のあり方などについても担当しています。財務省はMinistry of Financeですので、国際局は、International Finance、すなわち国際的なお金の流れに関する仕事を行うところになります。国際局の役割は多岐にわたりますが、私自身は大きく分けて4つぐらいと整理しています。1つはG7, G20などのグローバルな世界あるいはアジア地域における国際金融の協調。2つ目が、私が最近の生業としている開発金融。3つ目は、為替市場や外貨準備の運用。4つ目はインテリジェンス、経済安全保障、資金の流れの廉潔CDSのエキスパートのクラスメートに聞いたり、法 12 ファイナンス 2024 Dec.財務省における国際局の役割

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