知育・啓発施設(ちえなみき内観)敦賀駅西地区各地の話題連載各地の話題3.知育・啓発施設「ちえなみき」(以下、特別目的会社:SPC)に市有地を有償で貸しSPCの開発投資によって増額となる当該開発エリアの宮や港(金ヶ崎)エリアといった「観光拠点に誘う玄関口」として、市民にとっては「普段使いの拠点」として、敦賀駅前に交流と日常的な賑わいを生み出すことである。本事業の整備スキームとしては、対象事業用地(市有地)に事業用定期借地権を設定し、民間開発事業者付けた上で、SPCが施設を整備・所有する。そして民間によって整備した施設の一部を市が公共施設(ちえなみき)として有償で賃借する。その「ちえなみき」の管理・企画・運営については、指定管理者として丸善雄松堂・編集工学研究所共同企業体を指定し、市は指定管理料を支払う内容となっている。これらの公的負担となるテナント賃料、指定管理料等は、エリアで生まれる資金(定期借地料、立体駐車場の納付金)や固定資産税増収分を財源として位置付け、収支のバランスをはかるものとなっている。エリア収入にあわせて支出を考え、身の丈にあった開発規模とすることで、財政負担を軽減するための持続可能な資金スキームを構築し、「ちえなみき」の事業継続を支える重要な土台になっている。また、土地区画整理事業で生じる公園を全体計画の中央に配置し、芝生広場として本市で整備した。その周囲へコの字型に施設(ホテル、飲食・物販施設、子育て支援施設等)を配置し、尚且つ、全体に回遊性のある通路とキャノピーを設けている。駅周辺全体として、景観的にも空間的にも連続性のある街並みを創出している。本事業を振り返れば、結果として、全体事業費の8割以上が民間資本となっており、市の財政負担としては、1割以下に留めるに至った。逆にSPCにおいては、市がテナントとして入居することで、収支が安定し、持続可能な経営に寄与するメリットが生まれている。その入居する「ちえなみき」の管理・運営費は、エリア収入が財源となっているため、賑わいによって生まれる資金が上手く循環しているといえる。「ちえなみき」は、年間10万人という来場目標を3ヶ月で達成し、開館から約2年が経過した令和6年9月末時点では、70万人を超えたところである。「ちえなみき」は、図書館でもなければ本屋でもないという設定(知育・啓発施設)だからこそ、可能性の幅が拡がると考えている。社会情勢における書店数の減少という中で、売れ筋の本ではなく、良質な知にアクセスするための環境整備に投資する意味合いが強い。貸し出すサービスを提供する市立図書館とは異なり、書籍購入という選択肢を増やすと同時に、知的情報インフラを整えることを前提とし、本との出合いの中で、自己対話を通じて新たな気づきを得る(啓発)、なにかを学び創造する(知育)、それが本施設のコンセプトである。その先にある、本を通じて「人」と「地域」と「世界」が繋がる、新しい知の拠点を目指している。また、失われていく書店文化を守る意図も孕んでいる。図書館ではなく書店形式となった背景には、図書館法に縛られない自由度の獲得のほか、売れた冊数分を補充するなどして、書籍在庫が増え続けることなく、一定量をキープしたまま新陳代謝を図り変化に対 96 ファイナンス 2024 Dec.
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