ファイナンス 2024年11月号 No.708
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[プロフィール]増井 良啓 東京大学大学院法学政治学研究科教授東京大学法学部卒業後、東京大学法学部助手、助教授を経て、2003年より現職。この間、ウィーン経済大学、ニューヨーク大学、シドニー大学、シンガポール国立大学、税務大学校などで客員教授。専門は租税法。 ファイナンス 2024 Nov. 85財務総合政策研究所 総務研究部 研究員  酒井 花野最初に、本特集号を企画・編集するにあたっての動機や問題意識について教えてください。特に、今回は「税務執行」という観点から各論文が書かれておりますが、その観点からは、昨今加速するデジタル化・グローバル化の動きについて、どのようなことに注目すべきであるとお考えだったのでしょうか。まず問題意識です。「人はなぜ納税するか」は、実はとても不思議なことです。と言うのも、国の公共財提供と人々の納税との間には直接の対価関係がありません。コンビニで牛乳を買うために対価を払うのとは違って、納税は負担として意識されます。にもかかわらず、多くの人は自発的に納税する。なぜでしょうか。この特集ではとても広い意味で「税務執行」という言葉を使っており、租税制度を現実に動かす作用を広く指しています。ですから、税務行政だけでなく、取引環境や納税環境、納税行動を幅広くカバーしています。この中で注目すべき動きはいろいろありますが、デジタル化により納税環境が変化し、そしてそれが国境を越えていることが、特に注目すべきことだと思います。例えば令和6年3月の税制改正でも、国外事業者コラム フィナンシャル・レビューとは財政・経済の諸問題について、第一線の研究者や専門家の参加の下に、分析・研究した論文を取りまとめたものです。1986年から刊行を続けており、2022年12月には通巻第150号を迎えました。1. 本特集号を企画・編集するにあたっての動機や問題意識財務総合政策研究所(以下、「財務総研」)では、年4回程度、「フィナンシャル・レビュー」(以下、「FR」)という学術論文誌を編集・発行しています。今月のPRI Open Campusでは、6月に刊行された、「21世紀の課税と納税」をテーマとしたFR第156号について、責任編集者を務めていただいた増井良啓東京大学教授にインタビューを行い、どのような問題意識に基づく特集なのか、それぞれの論文の読みどころなどについて、「ファイナンス」の読者の皆様に、わかりやすく紹介していきます。37フィナンシャル・レビュー「21世紀の課税と納税」の見所責任編集者 増井良啓教授に聞く

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