ファイナンス 2024年11月号 No.708
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令和6年度職員トップセミナー ファイナンス 2024 Nov. 793.現在のゲノムはDNARNAもアミノ酸もすべての生物が持っています。しかもこの2つは、実験室で合成できるんですよ。ですから、自然にできることも可能だったでしょうというわけです。(3)生命のタネ「RNA」の誕生ここからはミラクルで、進化のプログラムというのが開始しました。進化とは「変化」と「選択」を繰り返して姿や性質が変わることを言います。「変化」というのは、親とは違う多様な個体ができることで、「変異」と言います。「選択」というのは、多様な個体のうち、たまたまその環境で生き残ることができることで、「適用」と言います。最初にできた物質はRNAだろうと言われております。RNAの構造は、A、G、C、Uという4つのブロックが長くつながったひも状の分子で、いろいろな配列があります。RNAには2つのすごくユニークな性質があります。1つ目は自分で配列とか、長さとか構造を変えること、2つ目は自分のコピーを作ることです。Aに対してはU、Gに対してはCというブロックがくっつきます。ですから、ひも状の分子を鋳型にして、新しい裏表の関係の鎖ができるわけです。それがパッと離れて、またそれぞれが鋳型となって、Aに対してはU、Gに対してはCというブロックがくっついていく。自分のコピーを作ることができるのです。(4)進化のプログラムが開始RNAはAとU、GとCがくっつきますから、長いひも状なのですけども、一本の鎖の中でもいろんなところがくっつくので、いろいろな形を作ります。ここにA、B、C、Dの偶然できたいろいろなRNAがあるとします。それぞれ配列が違います。AもBもCもDもEもコピーしては壊れ、コピーしては壊れを繰り返します。そしてたまたまAというRNAが他よりも壊れにくかった、あるいは自分のコピーを作りやすかったとしますね。そうすると、全部Aに材料を取られてしまいます。そこで長い時間をかけるとAばかりになります。これが「選択」です。B、C、D、Eは分解したまま死んでしまった。これがおそらく最初の死の起源であろうと考えております。これと同じことがずっと起こるのです。Aの中でまた変化が起こります。進化は「変化」と「選択」です。A’というのができたとしましょう。このA’は、他のオリジナルのAに比べると、壊れにくかった、あるいはコピーが作りやすかったと仮定すると、長い時間そのままにしておくと、A’ばかりになってしまいます。A’に全部材料を取られて普通のAは分解されて死んでしまった。これが死ということなのです。ずっとこれを繰り返した結果、今いる地球上の全ての生き物ができたのだろうと考えられるのです。RNAの並び順つまり遺伝情報のことをゲノムといいます。ですから、このAというゲノムが生き残ったわけですね。これが私たちの祖先のゲノムとなります。ここで少しまとめますと、多くの研究者は、私も含めて、生き物の起源はRNAだったと思っています。もっと正確に言うと、そこに書かれているデジタル情報が重要だったのです。その情報によって、壊れにくい、コピーを作りやすいものが選択されて残ってきた。ゲノムは壊され、選択され、作り変えられ、また選択され、を繰り返して進化した。ゲノムが壊れる、RNAが壊れることが死ぬということだったのだろう、これが死の起源だろうと私は考えています。現在でもこの関係は実は続いておりまして、今はRNAからDNAという物質に変わりました。RNAとDNAはほとんど同じ物質ですが、DNAはRNAよりも壊れにくい。途中から進化の選択によってDNAがRNAにとって代わったわけです。しかもDNAは二本鎖で安定的です。DNAはRNAから遺伝情報の座を奪いましたが、RNAが消えたわけではなく、RNAは依然として健在で、mRNAとして、タンパク質を作るという非常に重要な働きをしています。DNAもRNAと同じく複製します。細胞が増える前に複製して、先ほどと同じように一本のひも状の分子が鋳型となって、Gに対してはC、Tに対してはAがくっつく、こういった関係で複製して同じものができるのです。

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