(2)食べられて死ぬ:小動物(3)食べられなくなって死ぬ:大型の動物生物はなぜ死ぬのか?1.生物はすべて死ぬ〜死に方は様々〜(1)プログラム的に死ぬ:昆虫2.死の起源を尋ねて(1)38億年前の地球にタイムトラベル 78 ファイナンス 2024 Nov.生物は必ず死にます。ただ死に方とか寿命にはいろいろありまして、代表的な3つのパターンをあげますと、例えば昆虫はプログラム的に死にます。時期が来たら死ぬのです。カゲロウはトンボの仲間ですけれども、束の間の命でして、羽化して成虫になってから数時間で死んでしまいます。カブトムシなんかはご存知のように1年です。お盆ぐらいまではすごく元気ですけれども、怪我したわけでも病気したわけでもないのにバタバタと死ぬのです。まさにプログラム的な死に方です。当時小学生だった私の子供から「カブトムシは何で死んじゃうの?」と聞かれたことがあります。私はそれに答えられませんでした。死ぬ理由はわかります。秋になるとカブトムシの体液が固まってくるのです。でも、死の意味については答えられませんでした。それもあって、何でそういうことが起こるのか、といったことを考えていくことが「生物はなぜ死ぬのか」という本を書く動機の1つになったのです。他の生き物、例えば小さな動物、昆虫よりちょっと大きい生き物は、ネズミに食べられたり、カラスに食べられたり、怪我したりして死んでしまいます。寿命を全うすることはほぼございません。魚類はもっとすごくて、マグロなどは5,000万個も卵を産みますが、そのうち寿司屋に並ぶぐらい大きくなるのは数十匹です。食べられるために生まれてきたような感じですね。最後は我々も含めた大型の動物です。どういうふうに死ぬかというと、飢え死にです。年を取ってくると老化して獲物が取れなくなって死にます。あるいは他の生き物に食べられて死にます。体が大きいので、他の生き物から食べられることは少ないいため、基本的には飢え死にです。まとめますと、プログラム、アクシデント、老化型、この3つのパターンがあります。野生の動物というのは、怪我はあるけど、病死はほとんどありません。病気になる前に、食べられたりして死んじゃいます。死因は寿命ばかりではございません。皆さんご自分の手や周りの人の顔をご覧になってみてください。すごくよくできていますよね。こんな緻密に精巧にできているのに、何で壊すのか、死ななきゃいけないのか。「生物はなぜ死ななければならないのか?」これは生物学の大疑問です。私たち生物学者は、何かわからないことがあると、その進化について考えます。私たちですが、元をたどれば、すごく単純な一個の細胞から始まっているのです。それが長い時間をかけてだんだん進化して植物になったり、動物になったり、いろんな生き物になったわけです。ですから今複雑で分からないものでも、その大元を辿ればわかるだろうと考えます。化石を見るわけではなく、今いる生き物で、昔からいて、その形を維持しているようなものを探すのです。すべての生物は死ぬ、ということは「最初の生物が死んだ、だからその子孫である私たちは死ぬ」と生物学的には考えます。では最初の生物はなぜ死んだのか、この生物が死んだ理由で、その子孫である私たちはみんな死ななければいけないのです。ではその理由を尋ねましょう。38億年前の地球にタイムトラベルしてみます。(2)生命の誕生:38億年前生命の誕生は今から38億年前と言われております。熱水噴出孔、下から熱いお湯が湧き出るようなところから生命ができたのだろうと考えられています。いろいろな物質が地下から湧き出る、それに加えて、温度が高いので、化学反応が起こりやすかっただろうというわけです。最初にできた物質はRNAとかアミノ酸などの有機物だと考えられています。有機物は生物の材料です。
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