ファイナンス 2024年11月号 No.708
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域事務所、国連事務所、欧州事務所)、17ある地域能力開発センター(RCDC)で活動しています。RCDCには、技術支援を行う地域技術支援センター、講義形式で研修プログラムを行う地域研修センター、もしくは両機能を備えたセンターがあります。技術支援では各マクロ経済分野毎に雇用された長期専門家が、各センターに駐在し、管轄する域内メンバー国に対して能力開発を行います。研修プログラムでは、域内国の若手・中堅の政府職員が、IMF本部職員や短期専門家等から、1〜2週間程の研修を受講します。IMF本部が公共投資管理、税務行政、金融部門、ガバナンス等の包括的な診断ツールを通じたレビュー、戦略的な政策助言、中期改革計画の策定等の能力 ファイナンス 2024 Nov. 75コラムIMFのグローバルプレゼンスIMFは、ワシントンDCにある本部に加えて、約100ある現地事務所、広報・地域事務所(アジア太平洋地(サーベイランスや融資を担当)は、RBMデータへのアクセスを通して、各国のニーズを踏まえた優先順位付けの議論にも役立てることが可能です。また、RBM活用による大きな利点は、計画段階から、受益国の当局の関与が増え、どのような目標や成果を設定するべきか、IMFとの協議を通じて受益国自らが主体的に理解し、改革に取り組むというオーナーシップを促すことができる点です。そして実行・評価においても緊密な関与が期待されています。一方で、その活用にあたってはいくつか留意すべき事項があります。第一に、データの客観性の確保が不可欠です。つまり4段階評価にあたっては、各プロジェクトの担当者(デスクエコノミスト等)が行う達成状況に応じたリワード的な要素ではなく、客観的に評定がなされることでプロジェクト間の分析を可能にします。その上で、RBMを通じて得られた教訓を生かし、受益国への能力開発の効果を最大化していくことが重要です。IMFでは、定期的に、特定の能力開発活動及びワークストリームに関する内部評価もしくは、マルチドナー基金での能力開発活動に関する委託先の外部機関を活用した外部評価を行っており、妥当性、整合性、有効性、効率性、インパクト、持続性の観点(OECD/DAC Criteria)で測定しています。有効性審査にあたっては、RBMを通じて得られた目標及び成果に関するデータを、単純に一つのインプットとして使うのではなく、他のデータソース(例えば、関係者へのインタビュー、サーベイ、ケーススタディ)とも突き合せた上で、情報を補完しています。第二に、受益国の状況の変化に応じて対応する柔軟性を失わないことが重要で、必要があればログフレームの変更等の対応が求められます。一方で、成果の評定が歪まされることの無 4 4 おわりに外部資金で担う能力開発においては、その効果を測定するとともに、資金の担い手であるパートナーに対する説明責任を果たしていくことも重要です。RBMを通したモニタリングの強化等がその一助となることが期待されており、日々、能力開発業務に携わる中で、RBMに関する議論は避けて通れません。IMFでは現在、プロジェクト毎にRBMを活用していますが、直近の能力開発戦略に対する包括的レビューでは、そうした個別プロジェクトの結果を積み上げる形で、より上位体系(例えば国・地域レベル、もしくは特定のテーマ等のポートフォリオレベル)でのStrategic Result Frameworkを設定することで、長期的な開発効果の測定を図っていくことを今後の課題としており、他援助供与機関等の事例も参照しつつ、検討が進められています。いように、変更に対しては一定の一貫性を持ったアプローチを取ることが必要です。第三に、IMFにおける能力開発の多くは複数年を通して目標を達成するプログラムアプローチが取られており、RBMから得られる一時点のデータの解釈には慎重さが求められ、評定への過度の依存には注意すべきです。また、途上国の性質(脆弱国・非脆弱国)を踏まえ、短期的な達成状況だけで成果を判断するのではなくそのキャパシティ等も考慮しながら長期的な関与が必要です。十分ではない結果の際には、RBMはなぜそうなったのかという問いを提起するきっかけになりますが、その周辺にある諸要因を詳しく分析することが一層重要になります。

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