ファイナンス 2024年11月号 No.708
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2 2 RBMの発展結果重視マネジメント(RBM)とは、OECD(2024)によると、“A management strategy focusing on performance and achievement of outputs, outcomes and impacts”と定義されています。二国間もしくは多国間の援助供与機関において、限られた資金で如何に効果を最大化するかは長年にわたる課題であり、IMFでは、RBM導入に向けた取り組みを2000 ファイナンス 2024 Nov. 73*3) IMF(2024a, b)を参照。*4) RBMの課題等について、Mayne, John(2007)“Challenges and Lessons in Implementing Results-Based Management,” Evaluation, 13(1), 87–109が詳細に触れています。*5) IMFの能力開発やその他業務については、ソーシャルメディア等のコミュニケーション媒体を通じて対外発信されています(https://www.imf.org/en/Social-Hub)。コラム能力開発局(ICD)の組織概要ICDは、2012年に、前身のIMF研修所(IMF Institute)及び技術支援管理室(Office of Technical Assistance Management)が統合されて出来た、IMFの中では、比較的新しい部局です。主な所管業務は、1)外部資金の調達及びパートナー国との関係構築、2)IMFの能力開発に関する戦略・ガイダンス等の策定、3)加盟国に対するマクロ経済・金融分野に関する能力開発を提供する部署に分かれます。私が所属するグローバルパートナーシップ課は1)に属します。日本は、国内歳入動員や財政管理、債務管理等の分野をはじめとして、IMFの能力開発活動を長年にわたり支援しており、日々の業務の中で“Japan”のフレーズを聞く機会が頻繁にあります。一方で、約200人程度のICD職員の中で、日本人職員はわずかです。IMFが行う能力開発に多くの方に関心を持ってもらい、IMF、ひいては、ICDや他の機能局(例えば財政局や金融資本市場局等では、特定の分野に特化した能力開発を実施)において、日本人職員が能力開発分野に一層貢献していくことを期待しています*5。年中旬以降、進展させてきました。当時の能力開発のモニタリング及び評価手法といえば、IMF内もしくは委託先の外部機関による事後的な評価が中心であり、プロジェクトの一連のプロセスを通じた体系立てたツールはありませんでした。そのため、能力開発の計画段階から事後評価まで、共通の基準に照らして、効果やインパクトを測る必要性が唱えられました。その後、いくつかのプロジェクトにおけるパイロットフェーズを経て、2013年の能力開発戦略に対する包括的なレビューでRBMの標準化に合意、2017年に内部での運用指針を定めるRBMガバナンスフレームワークが策定され、IMFが実施する能力開発(技術支援、研修)の全てにRBMを適用することになりました。RBM運用上の各種指針の下、IMF内部のシステム(Capacity Development Management and Administration Program:CDMAP)において、能力開発活動(計画策定、予算の執行管理、モニタリング、レポーティング)を一元的にモニタリング及び評価しています。現在ではそのデータが蓄積されつつあり、更なる活用に向けた下地が出来あがっています。RBMはIMF内で、長い期間を経て発展してきましたが、こうした取り組みを実施していく上では、様々な課題が存在します。例えば、組織文化として根付かせていくこと、複数年に及ぶ取り組みを継続的に実施していくことなどです。また、システム開発等のリソースを必要とし、従来の仕組みに多くの変化を与えます*4。*5めます。そうした国に対する支援については、世界銀行をはじめとする他の国連機関等を通じたものを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、IMFは日頃から財政・金融当局等との緊密なコミュニケーションや政策協議を行っており、マクロ経済状況に鑑みた実践的なアドバイスと最新の知識を提供できることは大きな強みと言えます。IMFでは、こうした能力開発を効果的に実施していく上で、共通の基準に照らしたモニタリング、評価に取り組んでいます。それが結果重視マネジメント(Results-Based Management:RBM)という手法であり、能力開発業務の一連のプロセスにおける活用が期待されています。2024年4月に実施された、能力開発戦略に対する包括的なレビュー*3では、RBMの更なる活用を通じて長期的な開発効果の測定を図ることが、主要トピックの一つとして挙げられました。本稿では、IMFにおけるRBMの取り組みについて触れたいと思います。

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