ファイナンス 2024年11月号 No.708
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図表1 キャンパス・アジアの歩み(出所)キャンパス・アジア共通質保証プロジェクト*1*1) https://qacampusasia.niad.ac.jp/objectives-background/concept.html東アジア友好という観点で成功している教育政策の一つ東京大学公共政策大学院におけるキャンパス・アジアの試み東京大学 服部 孝洋キャンパス・アジアは、その後、2016年にパイロットプロジェクトから本格化(第2モード)しました。2021年にはさらにASEANの国も含めた形(第3モード)へ発展し(キャンパスアジア・プラス)、現在に至ります(図表1)。*1日中韓を軸にした東アジアの関係は複雑さを極めるがゆえ、簡単にはコメントできませんが、将来、東アジアを担うであろう学生が若いうちから人的交流をすることは、東アジアの中長期的な友好関係に資すると 58 ファイナンス 2024 Nov.1.東京大学とキャンパス・アジアキャンパス・アジアとは、日中韓を軸とした東アジア地域における大学間の人的交流を主とする教育政策です。歴史的には、2009年に実施された第2回日中韓サミットにおいて、3か国間で大学交流の実施が提言されました。それを受けて、2011年からそのパイロット・プロジェクト(第1モード)としてキャンパス・アジアがスタートしました。キャンパス・アジアとは、「Collective Action for Mobility Program of University Students in Asiaの略」であり、アジアにおける学生間交流のための協働イニシアティブを意味しています。感じています。そして、大学間連携という観点では一定の成果を残していると考えています。筆者の理解では、政府からもその理解は得られています。例えば、2024年5月27日、韓国・ソウルにおいて、第9回日中韓サミットが開催されましたが、岸田前総理大臣は、日中韓協力の今日的意義を踏まえ、人的交流、持続可能な社会、ASEANとの協力の3つの分野での取組についての考えを述べ、日中韓協力の「人的交流」という観点では、キャンパス・アジアについて次のように言及しました。「将来を担う若者を中心とした重層的な人的交流こそが、日中韓の未来に向けた相互理解と信頼を育む礎であり、困難な時期においても課題の解決に向けた新たな発想を生む力となるとの認識に基づき、日中韓3か国間で始まった大学間交流プログラムであり、今や東南アジアに拡大している『キャンパス・アジア』をはじめとするプログラムの推進を引き続き後押ししていく。」東京大学公共政策大学院におけるキャンパス・アジアでは、日中韓シンガポールのトップ大学を舞台にした、東アジアの公共政策・国際関係を英語で学ぶダブル・ディグリーおよび交換留学のプログラムです。ダブル・ディグリー・プログラムとは、東大に加え、提携校の2校で学位(修士号)をとるプログラムです。アジア地域における相互の理解という観点で短期的な滞在ではなく、学位を伴った交流が重要であることから、東大では長年質保証を伴ったダブル・ディグリー東京大学における キャンパス・アジアの取り組みについて

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