ファイナンス 2024年11月号 No.708
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ファイナンス 2024 Nov. 17*1) マネロン等対策の概要に関しては、例えば以下財務省のHP「教えて!マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策」等を参照 (https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/amlcftcpf/2.measures.html)。国際局 資金移転対策室 大臣官房企画官 山﨑 貴弘/課長補佐 中村 正行/課長補佐 鈴木 隆俊/係長 山田 佳奈1.はじめにマネーローンダリング・テロ資金供与・拡散金融(以下「マネロン等」)対策に関する国際基準の策定・履行を担う多国間の枠組みとして、金融活動作業部会(FATF、Financial Action Task Force)が存在している*1。もっとも、FATFの加盟メンバーは38の国・地域と2つの地域機関(欧州委員会〈EC〉・湾岸協力理事会〈GCC〉)に過ぎず、FATF基準のグローバルかつ効果的な履行に向けては、FATFメンバー以外のマネロン等対策の強化も欠かせない。2.APGの概要APGは1997年に設立され、本部はオーストラリア(シドニー)に置かれている。APGには、アメリカやカナダといった先進国、ASEAN諸国のほか太平洋島嶼国など42の法域が加盟しており、他のFSRBに比べても経済規模や地理的な多様性に富んでいることが特徴である。年に1度総会を開催するとともに、域内こうした観点から、FATFには、FSRB(FATF-Style Regional Bodies)と呼ばれる9つの地域体が置かれており、(FATFに加盟していない)FSRB加盟法域においても、FATFと同様の相互審査を通じて、FATF基準が世界200以上の国・地域に適用されている。FSRBのうち、日本を含むアジア・太平洋地域は、APG(Asia/Pacific Group on Money Laundering:アジア太平洋マネー・ローンダリング対策グループ)がカバーしている。この9月にアブダビで開催されたAPG年次総会をもって、財務省国際局の梶川光俊審議官がAPGの共同議長(任期約2年)に就任した。本稿では、日本共同議長下の優先事項やアブダビ総会の模様を紹介したい。の相互審査を含む各種作業部会の活動等を通じて、アジア・太平洋地域のマネロン等対策の実効性強化に取り組んでいる。APGの共同議長は、常任共同議長(オーストラリア)と交代制共同議長(任期約2年)の2名からなり、我が国は2026年のAPG年次総会までを任期として、交代制共同議長に就任したところである。3.日本共同議長下の優先事項APGの交代制共同議長としての重要な責務は、マネロン等対策の実効性強化に向け、就任時に任期中の優先事項を設定し、実施することである。我が国は、FATF及びAPGを取り巻く状況も踏まえた優先事項として、(1)次期相互審査の円滑な開始、(2)域内マネロン等対策強化に向けた国際協力、(3)金融分野における新技術への対応、という「3つの柱」を掲げた。これらの設定に当たっては、地域的な重要性はもとより、FATFにおける優先事項との整合性、我が国の知見活用が可能な分野といった点を考慮要素とした。我が国から提示した「3つの柱」は、地域の課題を的確に捉えた積極的なイニシアティブであると、先の年次総会において広範な支持を得て承認された。また、会議後も個別に日本代表団に感謝と期待を述べるべくアプローチを受ける場面も目立った。今後、関係者と緊密に連携しつつ、以下の取組を着実に実施していく方針である。我が国のAPG共同議長就任について~我が国の取組方針とアブダビ総会の様子を中心に~

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