ファイナンス 2024 Oct. 73 川淵貴代JICA広報部長「牛乳を飲みながら読むな、キケン」32ページに匿名で登場した者です。本書、大変実践的でタメになるのですが、爆笑してしまうので、標題の一言を添えて(大量の)友人・同僚に勧めています。どのエピソードも「本当? too funny to be trueでは?」と思えてしまうくらいオモシロおかしいです。が、当の登場人物から言わせると、「きわめて的確かつ中立的な記載であり、驚くべき再現力」です。lavatoryもtofuも、間違いなくそういうやり取りが繰り広げられ、またそのようにしてADBでチームビルディングがなされていったのだろうと思います。その場に立ち会ってみたかったです。さて、大矢様には20年以上前に世界銀行日本理事室で大変お世話になりました。当時、折しもアルゼンチンがデフォルトを起こし、今はなき保証スキームであるRolling Reinstatable Guaranteeを発動した後の同政府とのやり取りが緊迫していた時期。ご着任早々、すごい勢いであらゆるスタッフや各国理事室にアポを入れ、現況を把握し、どんな会議でも常に議論をリード。今思えば、独自の「英単語帳」を駆使し、周到に準備をされていたのでしょうが、そうは感じさせない軽やかなコミュニケーション。たちまち世銀のスタッフ、各国メンバーを魅了したのは言うまでもなく、ついスタッフが理事会の大矢様のネームプレートに「Mr Oya」ではなく「My Oya」と印字してしまった気持ちも分かります(そしてそんなミスに気づいた、大変お優しい当時の理事がスタッフをかばうかのように「私の独占欲がついネームプレートに出てしまいました」と発言され、理事会の爆笑をさらわれたことがつい昨日のことのように思い出されます)。さて、この本です。秀逸です。素材は「エイゴ」なのですが、「好奇心を持つことがいかに人生を豊かにしてくれるか」に気づかせてくれる屈指の名著です。好奇心の根底には、相手の文化や歴史へのリスペクトがあり、その上で互いの違いや共通点を見出すことを楽しんでいるエピソードの数々には、これぞ理想的な信頼関係の構築方法!と思わず膝を打ちます。そして読み終わった後、なんだか無性に誰かとエイゴで話してみたくなります。エイゴに悩む人は当然のこと、人との距離感を縮めたい人にとってもヒントの玉手箱です。最後になりますが、大矢様、私を「中東の前科者」となることから救って頂いて本当に有難うございました。横堀直子国際協力銀行 執行役員 外国審査部長『エイゴは、辛いよ。』は、国際舞台での経験が豊かな著者が、英語学習の苦労と成功を赤裸々に語った一冊です。私は著者の部下として、本書に登場するいくつかの場面に立ち会ってきました。例えば、著者がウクライナ農業政策・食料省次官とビニールハウスの中でパイプ椅子に座りながら和やかに会話し、共同プロジェクト推進に向けて意気投合していくところ、混乱する空港で大きな荷物を抱えて走りながら、脱落しそうな部下(Y女史こと、私)を励ましつつ、空港職員に掛け合うところ、英国の政府高官と英語の単数・複数問題で楽しく議論しているところ、などなどです。その度に、著者の英語力、ユーモア、話題の引出しの多さ、そして国籍を問わず様々な相手と信頼関係を構築していく姿に尊敬の念を抱いてきました。本書を読むと、著者がどのようにして英語の達人になったのかが分かります。切れる英語フレーズ(例えば「来世はイケメン男子にして下さい」とか)を都度書き留めているオリジナル英単語帳の作成をはじめとする日々の努力に加え、国際機関でリーダーシップを発揮しながら人事制度改革を進めていく様子、国際会議で異なる意見をまとめていく苦労などが活き活きと描かれています。また、それだけでなく、そうした経験を踏まえた英語でのメモの取り方、国際会議で議論をうまく進めるための素敵なフレーズをはじめ、今日から実践したい具体的なアドバイスも満載です。しかし、本書には全くお説教くさいところはなく、とにかく面白く、読みながら思わず大爆笑してしまいます。そして、読み終わった後は、著者のパワーと温かい人柄にそっと背中を押されて、自分も国際的な舞台で様々な国の人々と分かり合う瞬間を感じたい、彼らと一緒に何かを作り上げていきたい、そのための努力を続けよう、という前向きな気持ちになるのです。本書は、これから海外に赴任する方、国際機関や国際的な舞台でのお仕事に関心がある学生や若い社会人に特にお勧めであると共に、国際的な舞台でタフな交渉の前面に立っている方や国際会議で議論をリードされようとしている方にも力を与えてくれます。著者の経験から学び、国際的な舞台で、たとえ困難に直面したとしてもワクワクしながらそれを乗り越え活躍する方が増えることを願ってやみません。
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