ファイナンス 2024年10月号 No.707
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七福絵銭(17世紀末以降:直径28.18mm、量目6.42g)コインの世界につれてって!〜収蔵庫からこんにちは 奥深いコインの世界〜(左)5銭ニッケル貨(昭和8(1933)年銘:直径19.01mm、量目2.80mm)(右)10銭ニッケル貨(昭和9(1934)年銘:直径21.98mm、量目4.05mm)6ペンス銀貨(1887年銘:直径19.30mm、量目2.80g)。表面にヴィクトリア女王(在位期間1837-1901)の肖像が刻まれている。ファイナンス 2024 Oct. 63 〈5銭貨・10銭貨〉(3)コインに願いをこめて〈6ペンス銀貨〉幸福になりたい、無事に帰ってきてほしい、そんな思いを人々はコインにこめました。ここでは、人々が願いをこめたコインを紹介します。〈七福絵銭〉江戸時代に造られた、絵や模様、文字などが刻まれたお金を、絵銭(えせん)と呼びます。円形で真ん中に四角や丸形の穴が開いているので、江戸時代に流通していた寛永通宝と似ていますが、お金として使われたものではありません。吉兆を意味する文字や図柄を刻み、お守りとして造られたものや、「めんこ遊び」の用具や石けりの玉といった子供のおもちゃとして造られたもの、棟上げなどの記念銭として造られたものもあり、その用途は様々でした。寛永通宝一文銭と同じ形をしていたことから、銭さし(ぜにさし。緡銭(さしぜに)ともいう。穴あき銭をわらや麻のひもでまとめたもの。)などに紛れていたこともあったようです。今回紹介した七福神を刻んだ絵銭は、江戸時代に盛んになった七福信仰の一環で、得財招福の守り札の代用として所持されたと言われています。直径約28mmの中に、七柱の神様が見分けられる姿で刻まれています。かつて5銭貨と10銭貨は、「死線(しせん、4銭)を越え、苦戦(くせん、9銭)を越える」という意味から、戦地に向かう人がお守りとして持っていったとされます。アルミ貨を除き穴あきのコインであったことから、腹巻や肌着、千人針に縫い込まれることもありました。千人針とは、出征する兵士が持った、弾除けのお守りのことです。白または黄色のさらし木綿に、出征する人の母や妻が街頭に立ち、女性たちに協力を求めて、赤糸で一針ずつ縫ってもらって結び目を作り、それを戦場で腹巻きなどに使用しました。日清戦争(1894-1895)や日露戦争(1904-1905)の頃に始まったと言われており、日中戦争開始直後の昭和12(1937)年頃から太平洋戦争(1941-1945)中にかけて、多く作られました。欧米では、結婚式の時に花嫁が古いもの、新しいもの、借りたもの、青いものを身に着け、特にイギリスでは、靴の中に6ペンス銀貨を入れると幸せになれる、というジンクスがあります。このジンクスは、以下の19世紀ごろの詩に由来していると言われています。Something borrowed, something blue,Something old, something new,And a sixpence in her shoe.

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