ファイナンス 2024年10月号 No.707
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造幣局本局(大阪市)ファイナンス 2024 Oct. 61 はじめに造幣局は、明治4(1871)年に、今の大阪本局が所在する大阪・天満の地で創業し、令和3(2021)年に創業150年を迎えた独立行政法人です。貨幣製造のほか、勲章・褒章、金属工芸品の製造、地金・鉱物の分析及び試験、貴金属製品の品位証明(ホールマーク)といった事業を担っており、大阪の本局のほか、埼玉県さいたま市及び広島県広島市の2か所に支局を有しています。両支局を含め、現在は約860人の役職員を有する組織です。今回ご紹介する特別展を開催した造幣博物館は、以上の造幣局の事業を紹介するため、また、造幣局が所蔵している貴重な古銭等のコレクションの公開を目的に、造幣局の組織の一つとして、昭和44(1969)年に大阪の本局で開館しました。その建物は、明治44(1911)年に火力発電所として建設された、赤煉瓦造りの構内最古の建築物で、建設当時の外観そのままに改装、復元したものです。平成21(2009)年には、開館40周年を記念して、「人に優しい博物館、環境に配慮した博物館、魅せる博物館」をコンセプトに大改装・リニューアルオープンし、現在に至ります。企画の背景造幣博物館では、造幣局が135年前の明治22(1889)年頃から収集してきた古いコインや、日本だけでなく、世界中で製造されたコインを所蔵しています。造幣博物館では、概ね年に2回、貨幣や造幣局の歴史にまつわるテーマで特別展を開催しています。本稿では、本年7月20日(土)から9月16日(月・祝)まで開催しました令和6年度前期特別展「コインの世界につれてって!~収蔵庫からこんにちは 奥深いコインの世界~」の内容についてご紹介いたします。常設展示では貨幣のほかメダルなども含め、約4千点の所蔵品を展示していますが、収蔵庫で大切に保管している貨幣のコレクション総数は約14万点にものぼります。それだけコインというものが、長い歴史を持ち、人々の暮らしや文化に広く、そして密接に結びついたモノである、ということがこの数からも窺い知ることができます。ところが、最近は、電子マネーやQRコード決済の普及など、いわゆるキャッシュレス化が急速に進み、コインを使う機会が減りつつあります。造幣博物館では、そういう時代だからこそ、物理的な実体を持つコインが、単に決済や貯蓄の手段=通貨としての役割だけではなく、多種多様な魅力を持った存在であることを多くの人に知ってほしいと考え、この特別展「コインの世界につれてって」の企画に至りました。(なお、造幣局では、通常、硬貨について「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42号)に倣い、「貨幣」と呼称していますが、本展では、様々な世代の多くの来館者に、貨幣の「硬い」印象を払拭し、親しみやすさを持ってもらうため、「コイン」と表記しました。本稿でもそれに倣っています。)コインの世界につれてって! ~収蔵庫からこんにちは 奥深いコインの世界~独立行政法人造幣局 造幣博物館・令和6年度前期特別展の紹介独立行政法人造幣局総務部広報官博物館(造幣博物館) 館長兼広報戦略室長 藤田 輝/主事 松嶋 理恵/主任 澤﨑 瞳(本展担当学芸員)

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