図1.1:人種と失業率(黒人、白人、アジア系、ヒスパニック)本レビューでは、累積死亡率について、年齢、BMI、持病等で調整の上、比較をしている。調整後の数値で比較すると、死亡が少ないのは、ハワイ(147人、10万人あたり)、ニューハンプシャー(215人)、メーン(218人)の順で、多いのは、アリゾナ(581人)、ワシントンDC(526人)、ニューメキシコ(521人)となる。アリゾナではハワイの4倍もの人が死亡しており、州の間のばらつきは大きい。表1.1は、上・下位の10州を抜き出し、2020年の大統領選でトランプ候補が勝利した州に網掛けをしている。共和党州の方で死亡者がやや多い結果となっているが、民主党州にも成績の悪い州はある。(注)網掛けは2020年大統領選挙でトランプ候補が勝利した州表1.1:州毎の累積死亡率ランキング(10万人あたり死亡者、調整後)順位12345678910ハワイニューハンプシャーメーンヴァーモントメリーランドワシントンコネチカットオハイオペンシルベニアネブラスカ死亡者順位14742432154421845249462852864748293492935029729851ニューメキシコワシントンDC死亡者443447453467469473488521526581州州アラスカジョージアネバダユタアイダホコロラドミシシッピアリゾナ 46 ファイナンス 2024 Oct.図1.1の示す黒人などマイノリティの歴史的に高い失業率の改善も念頭に完全雇用を追求する姿勢を鮮明にする。リーマンショック(Great Recession)後、2015年の金融引き締めが早すぎたと批判的にみている。財政政策についても、インフレや高金利への懸念が後退したとの認識から、拡張的政策をとる余地があるとする。ミクロの政策としては、経済機会へのアクセスの障害を排するため、インフラ投資、ヘルスケア改革、再生エネルギーへの投資、職業訓練、労働組合の強化などを提唱しており、これらはバイデン政権の政策の骨格となった。2020年代はコロナ禍とともに幕を開けた。コロナはアメリカに多大な健康上の被害(2023年5月までの死者で116万人)を与えた。ワクチンなどの予防措置の適用が政治論争の的となり、政治的分断を深めた。将来のパンデミックの再来を視野に、現在、コロナ対策の経済社会的帰結について学際的調査が行われている。調査は州毎の死亡率の違いが相当程度あったことを明らかにするとともに、予防のためのマンデート(強制)が子どもの学習に悪影響を与えたことなどを示唆している(コラム1.1を参照)。コラム1.1:コロナ対策の経済社会的帰結コロナ禍での行動規制は、熾烈な論争を巻き起こした。現在、様々なレビューが行われているが、代表的なものとして、多様な専門家を結集し、ランセット誌に載ったレビュー(Bollyky et al, 2023)を紹介する。レビュー期間は2020年1月から22年7月であり、州を分析単位としている。健康、経済、教育に関するアウトカムをみており、因果関係ではなく相関関係の分析である。
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