ファイナンス 2024年9月号 No.706
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NanoTerasuの線型加速器NanoTerasuの円型加速器(蓄積リング)放射光発生の仕組み挿入光源 54 ファイナンス 2024 Sep.とが可能です。電子を蓄積し円形軌道上を周回させる円型加速器は、電子の方向を曲げることで円形軌道上に電子を蓄積する64台の偏向電磁石、電子を小さく集める160台の四極電磁石と160台の六極電磁石、放射光を発生して失ったエネルギーを補うための4台の大型加速空胴で構成されています。この線型加速器と円型加速器の各構成機器は最新のアライメント技術により調整され、人間の髪の毛の太さの半分程度の50マイクロメートル以内の高精度で並べられています。3.NanoTerasuのビームライン放射光を発生させるとともに、発生した放射光を取り出し、様々な用途の利用に供するビームラインは、明るい放射光を発生する挿入光源、放射光のエネルギーを調整する光学系、試料の測定を行うエンドステーションで構成されています。NanoTerasuには最大で28本のビームラインの建設が可能ですが、運用開始時点ではそのうち10本が整備されました。量子科学技術研究開発機構が整備・運用する3本の共用ビームラインは、加速器の光源性能を最大限活かすように設計されており、世界最高性能のエネルギー分解能や空間分解能、高速偏光スイッチングの実現を目指しています。光科学イノベーションセンターが整備・運用する7本のコアリションビームラインは、様々な産業及び学術分野における研究開発を支援し、イノベーションの推進力となるように設計されています。

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