ファイナンス 2024 Sep. 53 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 NanoTerasu総括事務局長服部 正NanoTerasuの全景NanoTerasuは、整備を担った量子科学技術研究開発機構と光科学イノベーションセンターに加え、法律に基づき利用促進業務を行う公益財団法人高輝度高科学研究センターの参画を得て、当初の予定通り令和61.概要3GeV高輝度放射光施設NanoTerasuは、1メートルの10億分の1というナノの世界を観察することができる世界最高水準の先端大型研究施設で、従来に比べて100倍明るい放射光を発生できる最新の円型加速器設計を国内で初めて採用(世界では4例目)した次世代の放射光施設です。電子を加速器によりほぼ光の速さまで加速し、太陽光の約10億倍にも及ぶとても明るい放射光というX線を発生させ、これを物質に照らすことにより観察を行います。放射光施設は、基礎科学はもちろんのこと、エネルギー、材料、デバイス、バイオ、食品など様々な産業領域において幅広く利用され、世界に約50か所存在しています。硬X線(エネルギーの高いX線で、物質の構造の観察に適している。)を得意とするSPring-8(兵庫県)に加え、軟X線(エネルギーの低いX線で、物質の表面や界面の観察に適している。)に強みを有するNanoTerasuが、法律に基づく国の特定放射光施設として整備、運用されることになりました。NanoTerasuは、我が国初となる「官民地域パートナーシップ」に基づき、施設設置者である量子科学技術研究開発機構と、地域パートナーの主体・代表機関である光科学イノベーションセンターが、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会の参画を得て整備しました。整備の分担として、加速器と共用ビームライン3本の整備等を量子科学技術研究開発機構が、基本建屋とコアリションビームライン7本の整備等を光科学イノベーションセンターが担いました。年4月1日より運用を開始し、同月9日には光科学イノベーションセンターが運用するコアリション利用の利用者を初めて受け入れました。NanoTerasuでは我が国の放射光施設で初めて、利用者が実験を行うためのエリア(実験ホール)を放射線管理区域から除外することに成功しました。その結果、必ずしもすべての利用者が放射線業務従事者にならなくても実験に参加することが可能です。加えて、NanoTerasuは、宮城県仙台市の東北大学青葉山新キャンパス内に立地しており、東北大学とも連携し、NanoTerasuを中核としたイノベーション・エコシステムの形成が期待されています。2.NanoTerasuの加速器NanoTerasuの加速器は線型加速器と円型加速器で構成されています。電子を3GeV(ギガエレクトロンボルト)まで加速するための長さ110mの線型加速器は、電子を発生させる電子源と発生した電子をほぼ光速の3GeVまで加速する長さ2mの高周波加速管(Cバンド加速管)40本で構成され、高周波の周波数を2倍にすることで従来の半分の距離で電子を加速するこ科学技術・イノベーションを切り拓く3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu仙台市
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