ファイナンス 2024 Sep. 47 *2) FATF Guidance for a risk-based approach – Prepaid cards, Mobile payments and Internet-based payment services(June 2013)*3) Analyse nationale des risques de blanchiment de capitaux et de ■nancement du terrorisme en France, Janvier 2023*4) WHO World Health Statistics 2023*5) FATF Report – Crowdfunding for Terrorism Financing(October 2023) クラウドファンディングパー*2を公表している。10年前の公表レポートであり、その時点からプリペイドカードのマーケットはダイナミックに変化していることに留意しなければならないものの、マネロン・テロ資金供与に関わるリスクという観点で言えば、このレポートが示唆することは現在も有効であると考える。プリペイドカードが備える、カード保有者・使用者の匿名性の高さやカードを第三者に移転することの容易性など、高い利便性と表裏一体でマネロン等に対する脆弱性が存在することを挙げている。フランス当局が2023年に公表したマネロン・テロ資金供与のリスク評価書*3でもチャージ式プリペイドカードについて同様のリスク要因を挙げており、カードへのチャージ額について制限を導入することなどを含め、リスクに対応していることが述べられている。利便性を体験してみようと思い、フランスで気軽に手に入れられるチャージ型のプリペイドカードを購入してみた。カード発行会社のウェブサイトにて、氏名、住所、電話番号、メールアドレスを入力して、約10€でプリペイドカードを購入。2枚セットの販売オプションがデフォルトになっているのは、1枚は家族のうち誰かに持たせることが想定されているようである。数日でカードが自宅に郵送され、カード番号と同封されている別のコードをもとに、カードのactivate手続きをオンラインで完了させてから、いざプリペイドカードへのチャージを、と向かったのは近所のタバコ屋さん。私が住むアパートの近所のタバコ屋さんには、一日中、ひっきりなしに人が出入りしていることを知っている。なぜそれほどまでにタバコ屋が人気なのか。それは、フランスには愛煙家が多い(※国別で見ると、フランスの喫煙率*4はG7で最も高く、G20ではインドネシアに次いで2番目に高い)という理由だけではなく、パリの多くのタバコ屋は、ロトやスポーツくじ、馬券などの販売所でもあるため、賭け事に興じる人にとっても欠かせない場所であること、更には、プリペイドカードの発行やチャージの代行まで営んでいるからである。タバコ屋のカウンターに行き、プリペイドカードにチャージしたい旨とその金額を伝え、支払いを行う。すると間もなく、(紙レシートのような)バウチャーが発行される。バウチャーには12桁のコードが記載されており、この12桁の番号さえ知っていれば、他人のカードに対してもチャージ可能である。つまり、私の知り合いが保有するプリペイドカードに資金を移転したいのであれば、バウチャーを購入して、紙に記載の12桁のコードを相手に伝えるだけで済む。私は早速タバコ屋を出てプリペイドカードのアプリを開き、12桁のコードを入力して、直ちに自分のプリペイドカードにチャージした。チャージされたプリペイドカードは世界中どこでも国際カードブランドに加盟しているmerchantで支払いに利用でき、また、ATMでの引き出しにも利用可能である。一か月にチャージできる金額に制限はあるものの、繰り返しチャージすることが可能であり、また、当該プリペイドカードに対して口座番号(IBAN)を付与するサービスを選択すれば、他の銀行口座からプリペイドカードに付与された口座番号への送金も可能である。話は変わるが、ギフトカードに近い用途でのプリペイドカードの利用例でいうと、米国に住む関係者とカード支払いへのFATF基準の適用について議論していた際、「子どもの学校の先生にプリペイドカードにお金を入れてプレゼントする際、FATF基準上、誰にどのような義務がかかるのか」と質問されたことがあり、「なるほど、先生へのギフトのため、あらかじめお金を入れたプリペイドカードを渡すという方法もあるな」と感じたものである。私も以前、プリペイドカードで餞別をいただき、とても感謝して使用させていただいたことがあることを思い出した。かくも、プリペイドカードは様々な場面で有効なツールとして使用されていることを感じている。FATFは、Crowdfundingを悪用したテロ資金供与を防止するためのガイダンスペーパー*5を2023年10月に公表した。同ペーパーは、Crowdfundingプラットフォームの正当性や有効性の一方で、それを悪用す
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