現金 vs カードファイナンス 2024 Sep. 45 (出典)European Central Bankウェブサイト図1 SEPA:単一ユーロ決済圏 意識を背景に、FATFは基準の見直しを検討している。私にとって、そうした視点は決して仕事だけにとどまらず、日々の生活でもつきまとうことから、本稿では、パリでの生活を通じて「ペイメント(payment)」について感じることを紹介させていただきたい。パリで生活をはじめ、一層、現金を持たなくなり、カード一枚だけポケットに入れて外出することが多くなった。それは、多くの場面において、パリでは現金での支払いは疎まれる行為であると感じていることと、また、仮にお釣りとして小銭をうけとっても、それを使う機会はなかなか巡ってこないため、小銭を受け取りたくない、という観念からである。FATFでカード支払いに関する議論になった際、ある出席者が「現代においてプラスチックのカードなんて持たず、みんなデジタルのカードしか持たないんだから」と発言したフレーズを聞き、プラスチックのクレジットカードを持ち歩くのは止めようかなと思うことはあったものの、不意に現金を必要としてATMでカードを利用したいという場面が訪れるかもしれないなどと考え、変わらずプラスチックのカードを持ち歩いている。「カード」と一口に言っても、支払いや送金に利用されるカードは、大別してクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードが存在する。フランスでは、銀行口座を開設すると、Carte Bleue(カルトブルー)と呼ばれるクレジットカードとデビットカード、ATMカードの機能が一緒になったカードが発行されるケースが多いと聞く。同僚に聞いてみたところ、「普段、デビットカードの機能しか使わないよ」とのことで、フランスではデビットカードの利用が最もポピュラーなのかもしれないが、あいにく、私が口座を開設している金融機関ではデビットカード機能のサービスは行っていないようで、私が使っているカードは、クレジットカードとATMカードの機能を備えたものである。フランス国内では、いずれの金融機関が営むATMであっても利用の際には手数料を支払う必要はほとんどない。また、国境を跨いだ送金であっても送金先が単一ユーロ決済圏(SEPA)内であれば、特別な送金メニューを選択しない限り、送金手数料は無料である。他方、そうしたサービスを利用する対価として、毎月、一定額の口座維持手数料を払っている。コラム1SEPA送金SEPAは単一ユーロ決済圏(Single Euro Payments Area)の略で、EU全加盟国(27か国)とイギリスやスイス、ノルウェーを含む非EU加盟国(9か国)を合わせた36か国の間で、企業や個人が、国内送金と同様に、簡便にコストをかけずにユーロ建ての送金・支払いを行うことを可能にする決済サービスの実施エリアを指す。SEPA圏内の金融機関に口座を有する人は、誰もがオンラインで気軽にSEPA送金を行うことができ、SEPA送金を行うために入力が必要な情報は主に、受取人の氏名とIBAN(国際銀行口座番号)のみである。即時送金のメニューを選ぶと、たとえ他国への送金であっても送金手数料が無料で、10秒以内に相手方の口座に着金させることができる。例えば、私はフランス語のレッスンをスペイン在住の先生に習っているが、SEPA送金を利用し、スマホでアプリを開く⇒送金元口座の選択⇒登録済みの送金先口座の選択⇒送金額の入力⇒con■rmationボタンを押す、の10秒ほどの手間でフランスから他国(スペイン)の口座に送金を行っている。
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