ファイナンス 2024 Sep. 13 *11) 他国からの要請を待つことなく、他国に課税権があると思料される事案に係る情報を自発的に共有する情報交換の一類型。*12) また、税務職員の守秘義務との関係で許される情報交換であるかどうかも前提となる。租税犯罪等タスクフォース(TFTC)の概要と国際租税犯罪対策の展望(1)ネットワークの強化(2)キャパシティビルディングの対面出席を求めた(例えば、米・内国歳入庁犯罪調査部(IRS-CI)チーフ、英・歳入関税庁(HMRC)犯則主席捜査官、星・内国歳入庁(IRAS)の査察部長級等が出席)。会合の冒頭では、武田部長が租税委員会の承認を受けて正式にTFTCの議長に就任することが報告された。続いて、武田部長が就任スピーチを行い、・ 税務行政の「最後の砦」である査察部門の重要性と、その国際協力の(事実上)唯一の場である当該タスクフォースの独自性・重要性、・ TFTCをよりOECD非加盟国にも開かれたinclusiveな場とすることで、TFTCの重要性・実効性を今後も維持していく必要性、・ 上記を達成するため、特にアジア太平洋・ラテンアメリカ・アフリカ諸国への積極的な参加の呼びかけや、キャパシティビルディング活動を一層強化していく重要性、等を強調した。続いて、2日間にわたって個別の議題についての議論が行われたところ、議題の一覧は参考に掲載したものに譲り、以下では3つのポイントに分けて議論の大枠を概観したい。各国にとり、国際協力における最大のメリットの一つとして考えられるのが、租税条約等に基づく情報交換(Exchange of Information:EOI)の更なる活用であり、特に租税犯則調査の中では、要請に基づく情報交換(Exchange of Information on Request:EOIR)が重要である。国際的な租税犯罪については、一般に、いわゆる反面調査先が国外に所在するケースが想定されるが、執行管轄権上の問題で、各国は他国で自ら証拠収集を行うことができない。こういった場合の証拠収集手段として有効活用されているのが当該EOIRであり、日本の査察調査においても国際事案の調査・告発に重要な役割を果たしているところである。TFTCでは、同じOECDの枠組みの中の税務長官会合(Forum on Tax Administration:FTA)と共同で、EOIRのやり取りの迅速化・効率化に向けた議論や、自発的EOI*11の更なる活用に向けた議論を行っているところである。日本としても、前回会合でEOIの積極的な運用改善に向けたプレゼンテーションを行う等、この分野で貢献をしてきている。また、EOIがフォーマルなネットワークだとすれば、前述したJ5のような、インフォーマルなネットワークの重要性も議論されている。刑事裁判の証拠として使用する情報であれば、証拠能力上、EOIRを通じた入手が必要と考えられるが*12、実際に国際的な租税犯罪を調査する上では、それに至らない様々な情報の交換も重要となり得る。この観点で、今回のTFTC会合では、租税犯罪捜査当局間のインフォーマルなネットワーク形成に関する試みとして「租税犯罪執行ネットワーク(Tax Crime Enforcement Network:TCEN)」がスピンオフ会合として開催された。参加者は、租税犯罪捜査に従事する職員及び検察等の法執行機関であり、米国IRSのGuy Ficcoチーフが議長を務めた。日本からは小職が参加をしたところ、非常に有意義な取り組みであったと考えている。また、国によって税務当局等の業務の分掌は異なっているため、こういった国際ネットワークが十分に機能するためには、外国から得た情報を最大限活用できるよう、国内機関間で適切な連携がとられていることも重要となる。その観点から、今回のTFTCにおいては、財産回復(Asset recovery)に対する税務当局の取組みにスポットライトを当てた議論も行われたところである。また、既に述べたように、キャパシティビルディングは近年TFTCが力を入れている分野であり、その背景には、途上国のSDGs政策に要する巨額の財源を賄うためには、まずは途上国自身の税務執行能力の担保が重要という発想がある。本年7月のG20財務大臣・中銀総裁会議(リオデジャネイロ)において採択された「国際租税協力に関するG20閣僚リオデジャネイロ宣言」においては、国内資金動員(Domestic Resource Mobilization:DRM)の重要性が強調されるとともに、前述のTIWBプログラム等、各種のキャパシティビルディングプロ
元のページ ../index.html#17