ファイナンス 2024年9月号 No.706
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*1) 本文中の意見は筆者個人の見解を示したものである。また、本稿を執筆するに当たり、査察課審理2係長の■引友里香氏に大きな助力をいただいた。*2) TFTCにはイタリア財務警察等の犯罪捜査当局も参加しているが、本稿では便宜上、国税庁が一次的に犯則調査を行う日本の制度を踏まえ、Tax *3) 足元で、明確化の観点からTaskforce on Tax Crimes and Other Financial Crimesに改称すべきとの議論があるが、本質的な点ではないため、本この場を借りて感謝申し上げる。Criminal Investigationを「租税犯則調査」と訳している。稿では触れない。TFTC会合の全体写真(議長は最前列中央)国税庁査察課 木村 元気*1 10 ファイナンス 2024 Sep.0.はじめに本年5月、パリのOECD本部で開催されたTFTC会合において、国税庁の武田一彦調査査察部長がTFTC議長に就任した。そこで、本稿では、TFTCの概要と2010年の創設以降の14年間を振り返るとともに、本年行われた第27回会合の概要をお示しすることを通じて、租税犯罪等に対する国際社会の取り組みの一端をご紹介したい。1.国際租税犯罪とTFTC近年、国境をまたぐ巨額の消費税不正還付をはじめ、租税犯罪の国際化が著しい中、国際的に租税犯罪等に対処する枠組みの重要性が高まっている。そうした枠組みの一つに、経済協力開発機構(OECD)租税委員会(CFA)に属する会議体の一つであり、各国の租税犯則調査当局*2が執行面の議論を行う多国間枠組みである、「租税犯罪等タスクフォース(TFTC:Taskforce on Tax Crimes and Other Crimes*3)」がある。租税犯罪に関する執行面での多国間枠組みは他に類がなく、数あるOECDの構成体の中でも非常にユニークな存在である。構成国は、OECDメンバー国(38か国)及びアルゼンチンであり、実際の会合には、これらの国に加え、投票権や役職就任権がない参加国(中、印、星、伯、サウジアラビア等)、招待国(アフリカ諸国等)、オブザーバーの国際機関が含まれる。日本からは、国税庁査察課が参加をしている。2.TFTCの歩み:2010〜2024TFTCは、租税犯罪が高度化・国際化する中にあって、税務当局も租税犯罪のみに着目するのではなく、テロ資金関連犯罪、マネーロンダリング、贈収賄等の凶悪な金融犯罪(Financial Crime)との関連も視野に入れていく必要性があるといった認識の下、2010年に設立され、前身であるWP8のサブグループ(マネロン等を議論)を改組する形でスタートした。当時は租税租税犯罪等タスクフォース(TFTC)の概要と国際租税犯罪対策の展望

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