い、南極特有の大型生物であるペンギンの行動生態を研究する者もいます。また、南極大陸は塵が少なく空気がきれいですので、天文の研究者も南極で観測を行っています。南極地域観測においては、海洋観測、設営、輸送、八木式アンテナの下の除雪など、海上自衛隊から絶大なるご支援をいただいています。野外観測を行う場合、研究者たちは大陸周辺の様々な拠点に行きたいのですが、ヘリコプターでの移動も海上自衛隊の支援を受けています。燃料は、パイプラインを「しらせ」から昭和基地のオイルタンクにつないで輸送します。それ以外にもヘリコプターを使った航空機輸送、大型の物資は雪上車とソリを使った氷上輸送など、輸送には2週間から3週間かかりますが、昼夜問わず、海上自衛隊のご支援をいただいています。このほか、新しい建物の建築、発電機のオーバーホールといった基地の設営面の仕事に関しても大きな支えとなっています。最後に南極地域観測隊長を務めるにあたって、少しお話しします。リーダー像というと、男性というイメージが強いのですが、これは無意識のバイアスの1つでして、男性がこれまで担ってきた役割を女性が担うということに関する葛藤はそれなりに本人も持っているところです。ここにハーバード大学で行われたベンチャー企業が多数集まるシリコンバレーの調査の結果があります。「あなたは男性リーダーの下で働きたいですか? それとも女性リーダーの下で働きたいですか?」というアンケート調査の結果、圧倒的に「男性リーダーの下で働きたい」の「はい」が多く、「女性リーダーの下で働きたい」については、圧倒的に「いいえ」が多いのです。アメリカの非常にリベラルな地域と言われるところでも、こういう結果になることから、おそらく日本も、あるいは南極地域観測隊もこの意識は少なからず存在しているであろうと思いながら、この役割をお引き受けしているところであります。そこで、ここから出発までの12月までの間に、隊員の皆さんとしっかりと信頼関係を築く努力をしていく。問題の種がありそうなら、それが小さいうちに摘んでしまう。「どう元気?」という隊員の皆さんへの声掛けをしながらしっかりとコミュニケーションを取り、最終的には「この人だったら大丈夫だろうな」と思ってもらえるような関係性を築いていきたい、一歩ずつ進めていきたいと思っています。南極で寝食を共にしながら仕事をしているとこの信頼関係(絆)が強まり、色々なことにものすごく感動して、感情が大きく揺さぶられる現場です。大の大人でも涙を流したりする人も増えます。非常に厳しい環境ではありますけれども、大変ワクワクとする現場で働けていることの幸せを感じております。ご清聴ありがとうございました。2.女性リーダーを第66次隊に置き換えると隊長の役割というのは、現場で最終的な方針、決定を下すというものです。「本当にこの人に判断を任せても大丈夫なのか?」という思い、そして先ほどの調査結果もあるように、「女性の隊長だし・・」という思い、初めて顔を合わせるタイミングである3月の冬期訓練の時には、全員このような不安感を持っていると思います。最後に:南極地域観測の魅力とは南極地域観測、大変魅力的な現場なのですが、常に死が隣り合わせですので、いざという時に助け合える非常に強力な信頼関係が不可欠です。2.輸送支援、設営支援強力な支援組織:海上自衛隊1.観測支援南極観測隊長を務めるにあたって1.女性リーダーと性差偏見 58 ファイナンス 2024 Aug.
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